頂*捧*企

□はちはち
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鉢竹 はちはち企画





八日目






教科の授業中、それとなしに三郎を見ると目があった。
逸らされた目に一瞬心の中に痛みが走る。
竹谷と絡んでいた視線は今は黒板の方に向けられていて、それでも竹谷は三郎から目が離せなかった。


好きだと気付いたのはつい昨日の事。
三郎に触れられた場所から熱が引かなくて、無意識にその場所に触れてしまう。
何度もその場面を思い出しては赤面を繰り返し、胸が苦しくなって、ああ自分は三郎が好きなのかと自覚した。


「ハチ?」

殆ど聞いていなかった授業が終わり、そのまま教室でぼーっとしている竹谷に声が掛かる。
その声を仰ぎ見ると雷蔵が心配しそうに此方を窺っていた。

「どうしたの?授業終わったよ?」

「ん?…ああ」

頬杖を付いたまま雷蔵の声にもぼけっとした声で答えていると後頭部を軽く叩かれる。

「寝惚けてんのかハチ!」

「起きてるだろ!どー見ても!!」

叩くなっ!と後ろを振り返れば三郎が立っていて、二人で睨み合っていると雷蔵が仲裁に入る。

「ほらほら。次は実技でしょ?早く行こう」

「あ!そっか」

「雷蔵が言うなら…」

鶴の一声に二人が大人しく従って実技の準備を始める。
実技の用具を借りに行くと言い置いて先に三郎が向かったので、竹谷と雷蔵はゆっくりと廊下を歩いて行った。

「ねぇハチ、何か悩みごとあるの?」

「んー」

発する言葉は疑問形なのだが雷蔵の表情は確信を持っていて、それに竹谷は困った表情になる。
相談すれば、誰よりも力になってくれるだろうけどと考えて。

「大丈夫!」

そう言って笑顔を向けた竹谷に、雷蔵は少し物足りなそうな顔をしたが深くは追及して来なかった。
そうしてにっこりと微笑んで告げるのだ。

「何かあったら僕に言うんだよ?三郎を叱るのは慣れてるから」

ね!と言って肩を組む雷蔵に竹谷は曖昧な返事を返してありがとうと呟いた。
きっとこの友人には、自分の悩みが分かっていて三郎が竹谷をどう思っているかも分かっている。
誰よりも周りを見て、誰よりも優しい友人の配慮に感謝しながら竹谷は微笑んだのだった。






「っ痛ーーー!」

押し付けられた消毒液に涙目になって抗議をするとじろりと睨まれる。
不機嫌であるのが伝わり、竹谷は大人しく治療を受けた。

医務室には竹谷と三郎以外いなく、外出中との書置きが机に置いてあった。
普段であったなら三郎がふざけて新野先生か伊作あたりに変装するが、ふざける気も起きないぐらい怒っているらしい。

といっても、実技の授業中に受け損ねた手裏剣を掠っただけなのだが。
五年にもなってとか、集中力を欠いていからたとか言われてしまえばそれまでだが。
忍務に使われる手裏剣ならば毒が塗られてこれで死んでいたかもしれないと考えると、やはり竹谷はまだまだ未熟なのだ。
打った雷蔵はまさか受け損ねるとは思わなかったのだろう、慌てて竹谷に駆け寄ろうとしたがその前に三郎に医務室へと攫われてしまったのだ。

帰ったら謝らねぇとな、と考えていると薬を塗り包帯を巻き終えた腕が竹谷へと戻ってきた。
そのまま傷の下をぎりっと握られる。
怒っているのかと顔を窺い見れば、どこか不安げに見つめる三郎の琥珀色の目が竹谷を見下ろしていた。

「ごめん」

三郎を見ていたら出た呟きに竹谷自身が驚いていると三郎が呆れたように息を吐く。
それに顔を上げると何時もの三郎だった。

「あんな基本的なので怪我なんかしてんじゃねーよ」

「う゛…悪ぃ」

自分も怪我するつもりではなかったと頭をがりがり掻いていると三郎に肩を掴まれて押えつけられる。

「な、何だ?」

「今日一日、何を考えていた。ハチは朝からぼーっとし過ぎだ!言うまで離すつもりはないからな」

集中力欠いたままで何ができると言われてしまえば御尤もで何も言えない。
暫く考えて、それでもこのまま迷惑になるならと竹谷は躊躇いながら口を開いた。


「好きなんだ…。そう思ったら考える事其ればっかりになって、何にも集中できないっ!!」

最初は小さかった声も最後には叫ぶように発する。
顔の赤い自覚がある竹谷はその顔が上げる事ができずに三郎の言葉を待つ。
込められた力が抜けて手が肩から外される。
それでも三郎からの言葉はなくて、竹谷は恐る恐る顔を三郎の方に向けた。

「誰が」

「え?」

目線が合ったと同時に言われた言葉は要領を得なくて、首を傾げて聞き返す。

「誰が好きなんだ」

竹谷にとって精一杯の告白も三郎には伝わってなくて、それどころか低く発せられた言葉には怒気すら混ざっていた。
それにうろたえて何も言えずにいる竹谷に三郎の言葉は続く。


「誰でもいい。お前を渡すつもりはないからな!」

雷蔵でも、と言ったのを最後に唇を塞がれた。
訳が分からなくて必死に退けようとするが、それが三郎の想いに対する抵抗だと取られきつく抱きしめられる。
呼吸も身体も心も苦しくて溢れた涙は静かに竹谷の頬を伝った。

「…っ!」

涙に気付いた三郎が顔を離して竹谷を覗き込んできたので、涙を拭って顔を背けた。

「悪い…ハチ」

沈んだ声でそう囁かれて、涙の収まらない顔を三郎に向けるとその顔は泣きそうに歪んでいた。
抱きしめられていた拘束も解かれ出て行こうとするものだから竹谷は慌てて三郎に抱きついた。

「ちゃんと話しを聞け!俺が好きなのは、三郎だ!三郎なんだよ!!」

ぎゅうと衣にしがみついて三郎の目を見てはっきりと告げる。
顔は赤いし涙で顔はぐしゃぐしゃだしで散々ではあるが、この場で言わないといけない気がしたのだ。
じっと三郎を見つめていると大分遅れて三郎の頬に朱が射した。


「ばーか!」

それだけ言うとぎゅっと抱き返されて、それに竹谷がくすりと笑うと更にきつく抱きしめっれたのだった。














「ハチは色々言葉が足りないんだよっ!」

「俺だっていっぱいいっぱいだったの!!」

「私を惑わせて楽しかったか?」

「態とじゃねーだろ!?」

「と言う訳で罰として口吸いしてください」

「はぁ!?やだよ!!」

「じゃあ私からするからいいや」

「えっ!?ちょっ、待てって……っ!?」




「ハチッ!大丈夫!?」





「雷蔵!?」

「チッ」

「俺達も居るぞ〜」

「三郎今舌打ちしなかったか?」

「……気の所為じゃないか?兵助」

「今の間気になるなぁ」

「もしかして口吸いするところだった?」

「ちちちちちち違うぞっ!!?勘ちゃん!!」



((((素直な子!!))))



「よしよし」

「大丈夫だぞ〜。俺たちそれ以上突っ込まないから」

「怪我は平気なのか?」

「ああ!掠り傷だし!!」

「私が舐めておけば治る様な傷だ」

「三郎っ!?人前で何してんだよ!!」

「別にいいだろ。皆関係知ってるんだし」

「それはただの噂だろ!!?」

「嘘から出た真だな」

「ちょっとそれと違うっ!」






「ウザいね〜」

「ウッゼ〜」

「ウッザ!」



「皆の言葉が胸に刺さる…」

「私は気にしない」

「少しは気にしろっ!!」







end

やっと終わりましたぎりぎり8日に間に合いました!!
ホントぎりぎりだけど(°p°;)!

なんとかくっ付いた二人。
くっ付かなかったら番外編とかで拍手文に廻すとこだった〜(〜▽〜;)


想いが通じたら周りを気にしない三郎。
想いが通じたら周りを気にしまくる竹谷。
それを多いに揄も当てられる五年の皆さん。

バランス取れとりますね〜。


機会があればまた今度はちゃんと関連した文が書ける様なのを書きたいです!!
此処まで読んで下さりありがとうございましたm(__)m

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