頂*捧*企

□はちはち
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鉢竹 はちはち企画





五日目






雷蔵に言われて竹谷と話をしようとするも、中々その機会には恵まれずに放課後まで至った。
結局それまで三郎は竹谷と口をきいていない。
運よく二人して委員会が無かったので、教室を出る竹谷を引き留めると自室へと呼び出した。
竹谷を連れて自室へと入ると同時に委員会へと出かけた雷蔵に笑みで頑張れと言われる。

そうして膝を突き合わすも、互いに無言であった。


「んで?話しってなんだ、三郎?」

暫くして竹谷から出た言葉は先程までの無言は何だったのか、まるで話の続きのよに切り出される。
それに三郎が僅かに動揺を見せていると、それを窺う様に竹谷は覗きこんできた。

「なぁ、俺達一緒に居て大丈夫なのか?」

また噂になるんじゃねぇ?と続けてくる竹谷に煩いと言うと静かになる。
噂が広まって、竹谷に嫌われるんじゃないかと雷蔵に言われて少なからず動揺したのは確かだが、肝心の本人の気持ちが分からない。


「俺だって…困ってるよ……」

何も言わずにいた三郎にいつの間にか俯いていた竹谷から小さく呟きが漏れる。

「上級生たちはないと分かっていてか揄ってくるけど、下級生達は信じてるだろ」

気を使わせていると言いたいのだろう、三郎も同じ気持ちである。
好奇の目で見られているならば、気にしなければ済むのだがあの自分達はどうすれば先輩に迷惑を掛けさせないかという表情でこちらを窺う姿は微かに心が痛い。

「ではどうすれば噂が消える」

「俺に聞くなよ〜!分かってれば、こうやって苦労してねぇだろ」

正直三郎としては、噂になって雷蔵に迷惑が掛からなければよかった。
二人の関係をどう思っているのかは分からないが、少なくとも迷惑は掛けていない。
寧ろそれによって竹谷が雷蔵に寄って行かなくなった事に怒っていたほどだ。

「もういいじゃん、今まで通りにすれば!昨日までは俺も混乱して避けてたけど、俺達の間に何もない事は俺達が分かってるから問題無いだろ?」

お前は雷蔵に迷惑かかんなかったらいいだろ?と竹谷は言う。
流石に五年間一緒に居るだけよく分かっている。


「あー阿呆らしい。ハチとこんな事で真剣に話し合うなんて!」

「お前が連れて来たんだろっ!てか、俺しか話してなくねぇ!?」

今までの空気をぶち壊すように三郎が寝転がれば、竹谷から抗議の声が降ってくる。
目だけそちらに向ければ、何時も通りの喧しい竹谷だ。
やはりこの方が落ち着く。
三郎が知らずに口元に笑みを浮かべていると竹谷の声も大人しくなっていく。
口を閉ざした竹谷が話は終わったと立ち上がるったのを腕を掴んで捕える。

「まだ何かあんのか?」

少し眉根を寄せて三郎を振り向いた竹谷に、にやりと笑みを向ける。

「ハチ、迷惑料払ってけ」

「はあ!?」

「迷惑料だ迷惑料。肝試しの時もそうだし、私に迷惑掛け過ぎだとは思わないか?」

真顔でそう告げる三郎に腕を振って解いた竹谷が不機嫌に口を開く。

「俺だって迷惑掛かったわ!!一年生に可哀想な目を向けられた俺の気持ちが分かるかっ!」

「なんで?」

「三郎と恋仲だと思われてるからだろ!」

俺だって三郎の恋人には同情すると竹谷に言われるのは心外だった。

「そう考えると俺超可哀想じゃね!?」

寧ろ堂々と悪口を言われている三郎の方が可哀そうなのだが竹谷はそれに気付いていない。
にっこりと笑って再び竹谷の腕を掴んだ三郎は、その腕を思いっきり引いた。
状況的に前に引かれた竹谷は床へと膝を付く。
其処で手を離されて、体を立て直そうとする反動で正座の様な形になるとその太腿に頭を乗せられた。

「何してんだ!?三郎!!」

「何って、膝枕」

眠い、と続けて目を閉じると慌てた声が追いかけてくる。
それが面白くて笑っていると額を叩かれた。

「本当に恋人みたいで気持ち悪いんだけど…!」

「私に膝枕できて光栄だろ」

「うわぁ…。三郎の恋人になる奴は本当に勇者だな」

そのままの状態で寝くなりだした三郎の耳に戸を開ける音が聞こえた。
竹谷と三郎が同時に音の方向に目を向けると雷蔵が驚いた顔をして立っていて、暫くすると笑顔に変わる。


「忘れ物取りに来たんだけど…。邪魔しちゃったかな?」

部屋に入って自分の文机から数冊の本を持ち出すと、部屋を出る直前に固まって動かない二人を軽く振りむいて微笑んだ。


「お幸せにね」


二人にとっては場違いの言葉を投げかけた雷蔵は、そう言って部屋を出ると小走りで図書室の方へと駆けて行ったのだった。









「うわぁぁぁぁぁ!最悪だっ!!」

「ハチの所為だぞ!!雷蔵に、雷蔵に見られたぁぁあああ」

「三郎がこんな事させたからだろ!」

「ハチと居るとろくな事ない!」

「ひでぇ!!そう思うなら、さっさと膝から頭退けろ」

「…もう嫌だ。私不貞寝する」

「人の話聞いてます!!?」

「うっさいハチ!!」

「あぁぁもう!雷蔵に膝枕でもして貰えっ!!!」

「毎日枕をそう思って寝てんだよ私は!」

「……お前マジで気持ち悪いな」






end

えっと…、五日目も間に合いませんでした!
ちょっとだけ。


話書いてて最初は竹谷が無かった事にしようと言わせたら、何もなく終わってしまうのでムリヤリ膝枕いれたった(# ̄ー ̄)
甘さの欠片もねぇけどな!!


この二人くっつきます?←二回目
トキメキってなんだろ。


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