頂*捧*企

□はちはち
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鉢竹 はちはち企画





三日目






反応のある人間というのは面白く、興味深い。
だから止められないのだと内心で三郎は独り言る。
目の前に居る竹谷も面白いぐらい反応が帰ってくるので、悪戯や弄る相手として大変気に入っていた。
それが自分の表現でもありそれが伝わる位には仲がいいと思っている。


「で。何時までそうしている積もりだ」

自分がそうなった原因なのはさて置き、廊下に座り込んだままの竹谷を見下ろす。
腰を抜かしたのかと失笑交じりに言うと、んな訳あるかっ!と竹谷は勢いよく立ちあがって一人先へと進んで行く。


明け方に催しを覚えて目を覚まし厠へと向かうと、同じ目的であろう竹谷が三郎の視界に入ったのだ。
周りを窺うように歩く竹谷に、悪戯心を刺激され足音を忍ばせて近寄って声を掛けるとそれはもう、大層驚いてくれた。
流石に声までは出さなかった様だが、人一人分ぐらいは飛び上がったと思う。
驚くと飛び上がるという表現はあるが目の前でそれを見ると笑いたくなるものがあった。


先に歩き出していた竹谷が数歩いった所で振り返って三郎を見ている。
その目が早く来いと言っていて、苦笑してその後に着いて行く。

「眠れたみたいだな、昨日は」

「ああ。昨日は毒虫が脱走して遅くまで駆け回ってたから、深く考えずに寝れた」

本当に良かったと言葉には込められていて、たったそれだけの事に喜びを感じるのが竹谷らしい。

「こんな時間に目が覚めなければもっと良かった!」

「生理現象だろ」

「もう少し耐えて欲しかった俺の体!」

廊下を歩く中で小声で会話しながら厠へと向かい、用事を済ませると自室へと引き返す。
竹谷は怖いのか、絶えず他愛ない話をしていると、そう言えばと言葉を発した。

「委員会でまとめた予定表書いたから、ちょっと俺の部屋に寄って持ってけよ」

「へぇ、今回は早いな」

「前に遅れた時、お前が次遅れたら容赦しないっつったんだろ!!」

前回遅れた時は三郎が変装して行ったら竹谷は相当怖がっていた。
やっぱりあの人の笑顔は一番脅迫力あるよなと再確認し、使えると隠れてほくそ笑む。
そうしている内に竹谷の部屋に着いて、次いで中に入った。


「んー…あれ?」

がさがさと机を荒らしながら手を動かす竹谷が困った声を上げる。
おっかしいなーと呟きながら部屋の中を探し回って居るので三郎は床へと腰を下ろした。

「ないのか?」

「いやある!!ある…筈だ!」

そう言って更に激しく動かす手を見ながら三郎は埃が飛ぶから気を付けて欲しいと思う。
思って、そう言えばと周りを見渡すと今荒らしたのは抜きにして比較的小奇麗に整理されている。
がさつな性格からは想像できない事に少々感心した。
雷蔵なんて、大雑把に自称片付けを行うものだから三郎が定期的に掃除を行わないと足の踏み場が無くなってしまうのだ。
それでも本人曰くまだ大丈夫らしい。


「おい、見付からんなら別の日でも私はいいぞ」

「あっ!待って!!」

「眠いから部屋に戻りたい」

「今じゃないと俺が忘れる!!」

立ち上がると必死の形相でそう告げてくる竹谷。
三郎は仕方ないともう一度腰を下ろし竹谷を待つ事にした。



結局、予定表が見つかったのは半刻後だった。


予定表片手に三郎が自室へと戻ると綺麗に折り畳まれた布団が一組。
そう言えば雷蔵が今日は朝錬をすると言っていたと思い出し、竹谷の所為でそれに付き添えなかったと憎らしくなる。
不貞寝をする為に再び布団へと戻ると三郎は直ぐに睡魔に誘われたのだった。








「二人って付き合ってるんだって?」

食べていた朝食の味噌汁を噴き出したのは、指された三郎だけではない。
二人、と三郎に続いて指された隣に座っていた竹谷も同じである。


「はぁ!?」

勢いよく立ち上がり、言葉を投げかけた雷蔵に三郎は聞き返す。

「あ。俺らも聞いたよ」

「まさか二人がそんな仲だったとはな。気付かなかった」

同席していたい組の二人が、聞き間違いであってほし言葉に追い打ちを掛けるように告げてくる。


「ないないないない!私とハチがとか!!」

「隠さなくていいよ〜」

全力で否定する三郎を照れ隠しだと思ったのか雷蔵がやんわりと微笑む。
その隣で生温かく笑うい組の二人に苛つきながら、お前も否定しろと言おうと横の竹谷を見ると固まっていた。
混乱の極みといった表情で動かない。
そんな二人に構わずに机を挟んで座る三人は話を続ける。

「朝錬していた時に聞いたんだけど、三郎がハチの部屋に入って行ったんでしょ?」

「それで三郎が帰ろうとするのを八左ヱ門が引き留めたとか」

「で、それに折れた三郎は八左ヱ門の部屋に残ったんだろ?」

流れとしては間違い無いのだが、根本的な事が間違っている。

「違う!!委員会の予定表を貰っただけだ!」

「序に?」

「言い訳を用意しているあたり、三郎らしい周到さだな」

「逢瀬は人に見られないように気をつけないと!」

聞く耳を持たぬとはこの事なのか。
絶望に気が遠くなりそうな三郎の目に、泣きそうな竹谷が映ったのだった。
その唇がなんで…と動いているのを見て酷く胸が騒いだ気がした。









「おい、三郎も固まっちゃったぞ」

「そうだな」

「何か、周りにすごい見られているよね」

「学園内の情報伝達の早さは異常だからな」

「二人を見たのが一年は組なら尚更だね」

「もう半数には知れ渡ってると考えていいな」

「そんなに!?うわぁ…僕達は二人を見守ってあげようね」

「そうだな」

「昨日二人の態度がおかしかったのは、二人の間に何かあったからだったんだな〜」

「僕達に話してくれても良かったのにね」

「近いから言い辛いという事もあるんだろう」



「……今日の兵助は饒舌だね」

「と言うか、機嫌がいいよな」

「味噌汁に豆腐が入っていたからな!一日一豆腐だ!!」


((目が輝いてらっしゃる…))






end

多分、兵助と雷蔵の言葉は分かると思う。
けど勘ちゃんが喋ると誰がしゃべってるか分からんくなる〜(T□T)

勘ちゃんの口調は兵助と雷蔵の中間で三郎寄りだと思うんですよね!
まあ偶に三郎と竹谷が分からなくもなるけど……(Θ▽Θ;)


さてさて、二人の仲進展するかしら。

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