頂*捧*企
□はちはち
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鉢竹 はちはち企画
二日目
「おはよー。ハチ!」
自室から出た竹谷は丁度食堂に向かう為に呼びに来たのであろう雷蔵に会った。
それにおはようと返事をすると、雷蔵がおや?といった表情を向けてくる。
「眠れなかったの?」
「…まあな」
眠くて目を擦る竹谷に、雷蔵は徹夜は程々にねと言ってくる。
委員会や課題で徹夜をする事が多い竹谷をよく知っているから出た言葉ではあるが、今回の理由はそれらではない。
昨日の肝試しが怖かったから、眠れなかったとは言えずに竹谷はその心配の言葉に曖昧な笑顔を返す。
「肝試しが原因だろ」
背後から竹谷にだけ聞こえる音量で呟かれた声に、竹谷は勢いよく振り向く。
呆れた様な半眼の目が竹谷を見ていて、その目が何でも見透かされているようで思わず後ずさってしまう。
「どうしたの?」
ハチ?と雷蔵に呼びかけられる雷蔵の様子から、三郎が昨晩の竹谷の失態の数々を話していないのは明白だ。
視界にある三郎の顔が笑顔であるのが凄く嫌な予感がした。
「まあ雷蔵、そっとしてあげよう。ハチも肝試しの後に徹夜で疲れているんだ」
「そう…?」
無理しちゃ駄目だよと竹谷に笑顔を向けると、雷蔵はそのまま三郎と肝試しの話で盛り上がる。
そんな二人に大人しく付いていった竹谷は、小さなため息を吐いた。
二人の話に聞き耳を立てるが竹谷に関する話は出て来ない。
この場で話さないという事は後々三郎に遊ばれるだろうと容易に予想がつく。
何とも悲しい経験からくるもので、今弄ばれた方がマシだったと竹谷は再び大きな溜め息を吐いた。
「ハチ」
いつの間にか下を向いて歩いていた竹谷は三郎に呼びかけられて顔を上げる。
食堂の前まで来ていたらしく、雷蔵は既に中に入って行ったようだ。
「…何だよ」
自分でも分かるぐらい不機嫌な声で三郎に返すと、そんな竹谷に三郎は珍しく優しく微笑みを向けた。
それに眉を潜ませた竹谷に三郎は口を開く。
「そんな顔をしなくても、私はあの事を話したりはしない」
あの事、とは肝試しの時の事で今思い返しても恥ずかし程竹谷はうろたえたのを思い出す。
それを何時もなら直ぐにでも雷蔵に伝わるのに、全く耳に入っていないどころかその話になりそうになると話を変えてくれた。
三郎もそんな優しさがあるんだなぁと感心していた竹谷に三郎は笑顔のまま告げる。
「その方が私にとって面白そうだから」
えっ!?という竹谷の声は後ろからの声に被って消える。
「おーい!三郎、八左ヱ門!其処で何してんだ?」
「おはよう」
手を振って近付いてくる尾浜とその横にいる兵助に三郎が軽く笑顔を向ける。
二人が近付いてくるのを見ていた三郎は、思い付いたように竹谷の肩へと手を置いた。
「楽しませてくれよ、ハチ」
当分はこのネタで遊ばれる事を示された気がして、竹谷は寝不足に次いで頭痛まで感じたのだった。
「あ、ハチその魚ちょうだい」
「ん」
「サンキュー」
「何時もより仲良しだね。三郎とハチ」
「仲良くねぇよ!いっぽうて」
「ハチ?」
「う゛」
「どっちかって言うと脅迫されている感じだね」
「冷静に見てないで、助けて勘ちゃん!!」
「今日の朝食に豆腐はないんだな…」
「兵助に至っては話に興味すらねぇのかよ!?」
「まぁそうカリカリするな。魚返すから」
「…おい三郎、これは魚の骨じゃねぇのか?」
「仲よしだね〜」
end
一日ってよりその日の一部分になった…( ̄∀ ̄;)
恋愛に発展する気がしねぇ…(°▽°)
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