頂*捧*企

□夏祭り
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09.たこ焼き



「たこ焼きー!!って小学校くらいん時やんなかった?」
「何だそれ」
「えーマジかよ!?知らねぇのかよっ!?」

頬に丸い形にした人さし指と親指を押し付けて、ぷくりと指の間に盛り上がった頬を三郎に見せると、明らかに初見です、という顔をされた。
お坊ちゃんめ、と先程とは違う意味で頬を膨らませ、竹谷は先程屋台で買ったたこ焼きに爪楊枝を突き刺すと口に放り投げた。

「お前がそんな事してるから、子供が真似してるぞ」
「ふぁ!?」

口にたこ焼きを入れたままの状態で三郎の指差した方を見ると、こちらを見ながら小学生ぐらいの子供がほっぺたに指を押し付けてたこ焼きー!とやっているのが見えた。
それを見て、子供の隣にいた友人らしき少年も真似をしている。
そういや俺も誰かのを見て真似したなあと竹谷はその頃を思い出し懐かしくなり、まだこちらを見ていた少年達に同じくたこ焼きーとお返しをすると、少年達は笑いながら他の友達の所へ行く。

「ああやって伝染していくんだな」
「伝染って…病気かよ!! あーでも俺もよく友達に見せたわー!」
「そんなハチだから子供達は真似したんだろうな」
「どーゆうこと?」
「精神年齢一緒だもんな?」
「いや何でそんな優しい感じで…。ってか、違ぇからな!?流石に俺も成長してるよ!?」

ぽん、と優しい力で肩に手を置かれ優しい声で諭されるのがムカつく。
肩に置かれた手を払いのけて三郎を睨むのだが、ニヤニヤと意地の悪い笑みが竹谷を見ている。
ムっと眦を吊り上げてみても三郎相手に効果はない様で、子供にやるような優しい手つきで頭を撫でられた。

「お前なぁ、いい加減…むぐっ!?」
「おお!本当にタコみたいだな、ハチ!」

ぐっと両頬を三郎の右手に挟まれて、頬が中央に寄って唇がむにゅりと押し上がる。
三郎に唇を突き出す形になった竹谷を三郎が喉を鳴らして笑っているのを半眼で睨みつけたが手離して貰えなかった。

「はなふぇほ!!」
「ん?何て言ってるんだ??ちゃんと言ってくれなきゃ分からないぞハチ?」
「ひゃふろーのふぁかー!!ふぁほぉーー!!」
「誰がバカでアホだタコハチ」

聞こえてんじゃねーか!と視線を向けても意地悪な笑みは継続している。
いい加減にしろとの意味を込めてぺちぺちと竹谷の頬を掴む手を叩けば、漸く手が離された。

「くっ…!仕返しだ!!」
「ふん。ハチなんぞに私が捕まるか!」
「あ!コラァッ!!逃げんなっ!!」

手を離されて直ぐに三郎の顔へと手を伸ばすも、予測されていたらしく簡単に避けられてしまう。
逃げる三郎を追うがひらりひらりとかわされる。
終には竹谷に背を向けて本格的に逃げ出した三郎を追うべく最後の一個であったたこ焼きを口に入れてごみを捨てると、三郎の背中目掛けて全力で追い掛けて行った。



end

私個人的にはたこ焼きほっぺになった頬肉をつんつんするのが好きでした。
今の子はこんなくだらないことやらないのかなー?

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