頂*捧*企

□夏祭り
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04.会場



会場に着いて、まず目に入ったのは中央にある櫓だ。
赤と白のしましまの幕が張ってあり、赤や黄、緑や青といった派手な色の造花で飾り付けられた櫓には数人の人が太鼓や笛、鐘を用いて音を囃し立てている。
櫓の周りには列を作って手や笠を振り踊っていた。
そこを中心に更に大きく円を描くようにして祭り屋台が軒を連ねており、屋台や踊りの周りには沢山の人が溢れ返って賑やかな祭りの雰囲気を醸し出している。


「ちょっと屋台をぐるっと見てくる!」
「俺も行くぞ勘ちゃん!豆腐の屋台があるか確かめたい!」
「あ、じゃあ僕も行こうかな」

会場の雰囲気に顔を輝かせた尾浜が屋台の方へと走り出し、その後ろを兵助と雷蔵が追って行く。
雷蔵の後を追おうとした竹谷は手を引かれてその進行を止められた。
手を引いたのは今まで手を繋いでいた三郎で、そちらに視線を向ければ無言で首を振られる。

「三郎!?このままだと逸れるぞ!?」

もう一度前を見れば、もう尾浜達の姿は人ごみに紛れてしまって見つけられない。
きょろきょろと周りを見たり背伸びをしたりと探してみたが、どうにも遠くへと行ってしまったらしくそれらしい人物は見当たらず竹谷は溜め息を零す。
そこに手を引いて竹谷を止めた人物からの声が掛かった。

「携帯があるから迷子にはならないだろ。それより勘右衛門に付き合ってたらそれだけで疲れて終わるぞ。いいのか?」
「ああ…そういえば」

そうだなと、思わず竹谷も納得して頷いてしまう。
尾浜は大変な祭りやイベント好きで、それに対する食欲と行動力が凄まじいのだ。
前に尾浜に付き合ったらあちこち連れ回されて、腹の膨れと疲れで早々とノックダウンしてしまったのを思い出した。

「楽しみたいなら自分のペースで行けばいい。雷蔵も兵助も目的を達成したらこっちに合流するだろうしな」
「そっか。…ん?雷蔵は何しに行ったんだ?」

兵助はあれだけ豆腐豆腐言っていたので目的は言わずもがなであるが、雷蔵の目的とやらが分からない。
首を傾げて三郎の隣に並んで歩けば、再度逸れないようにというかの様に手を繋がれた。

「雷蔵は、りんご飴を確保しに行ったんだろう」
「は?りんご飴を確保?何で!?」
「勘右衛門が言うには、この祭りでは毎年途中でりんごが無くなって売り切れになるらしい。雷蔵は甘いの制覇すると意気込んでいたからな」
「マジかよ!?無くなんのりんご飴!?俺も食いたいんだけど!!」

あわあわと慌ててりんご飴屋台を探すが、どうやら基本的には一種類につき一店舗ぐらいしか屋台がないらしく近くには見つけられない。
三郎のアドバイスで雷蔵へとメールで自分の分の確保も頼めば、すぐにOKと返事が返ってきて胸を撫で下ろす。

「いいって雷蔵が。三郎は?」
「さすが私の雷蔵!優しいな!! 私はいい、いらない」
「んー分かった。あ、こっちも幾つか買っといてって頼まれたから行くぞ」

雷蔵の頼みを三郎が断る筈もなく頷いたのを見て、携帯を渡して頼まれたものを確認してもらった。
円を描く会場に入って幾つかテント屋台を通り過ぎたが、大会本部や自治会のだしている屋台で主にビール等の酒類やジュース、つまみ等のメニューが張り出されている。
それらを見ていると目の前に携帯が突き出されて返された。
受け取って仕舞うと、もう一度テント屋台を見る。

「何か買いたいものあったのか?」

三郎に問いかけられてそちらへと視線を移せば、分かりやすいと口の端を上げられた。
バカにするような笑みではなく親しみのある笑みに、竹谷は素直に頷いてある方向へと指を向けた。

「アレ、買おっかな俺」
「じゃあ行くか」
「おー!」

同じ歩調で歩く三郎を横に屋台を目指しながら、竹谷は胸の内がわくわくとしてくるのを感じた。



end

まだ屋台に辿り着いてないとか…(遠い目)。
あと突発的にくる三郎のキャラの迷子が…(遠い目)。

うちの近所でやる一番大きなお祭りでは、花火が始まるぐらいに私は行くのですが、その頃にはりんご飴が無くなっています!!!
3年ぐらいそこのお祭りでりんご飴にありつけてませんギリィ!!
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