頂*捧*企

□夏祭り
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03.行き道



カラコロと周りが軽く心地良い音を奏でて歩く中、竹谷の足下ではペタペタとゴムの当たる音がする。
暗い足元を下駄で危なげなく歩く四人に思わず感心してしまう。
そうしていたら、履き慣れている筈のサンダルで何もない所で転びそうになった。
膝ががくりと崩れ、直ぐに体勢を立て直そうとした竹谷の腕が取られる。

「何やってんだハチ」
「三郎!」

掴まれた腕の先を見れば三郎が呆れた目をして竹谷を見ていた。
別に転ぶほど躓いた訳ではなかったのだが、支えようとしてくれた事に礼を言えば掴まれていた方の手を取られる。

「おいっ!三郎!!」
「危なっかしいだろ、お前」

歩き始めていた三郎が視線を竹谷へと投げてくるが直ぐに前へと戻る。
握られた手を引かれて、引き摺られそうになったので慌てて三郎で追いかけた。
隣に並ぶと三郎から一瞥を向けられるが言葉はない。
何だかんだ言うけど心配性だよなと、竹谷はこっそり溜め息を吐いた。

少しだけ先に行っていた三人は竹谷達のことを待っていてくれて、それに追いつくと歩くのを再開する。
カラコロと数人の足音とペタペタと一人の足音が足下で鳴り、上では会話の花が咲く。

「なぁ、まず何食べる!?やっぱりがっつり系!?」
「何を言ってるんだ勘ちゃん!まずは豆腐の屋台を探すに決まっているだろう!!」
「豆腐の屋台なんて見たことねーよ!?」
「でもおつまみ系でありそうだよねー」
「そうだな雷蔵!冷や奴ぐらいならあるんじゃないか?」
「ヤダよ俺!冷や奴なんて腹一杯にならないじゃん!!」
「俺もまずはがっつりいきたい!!」

竹谷が尾浜とだよな!と三郎と繋がれていない方の手で握手を交わしていれば、豆腐をバカにするなと兵助が怒りだした。
それを雷蔵が宥めつつ、かき氷とかわたあめもいいよねと言うと甘味好きの勘右衛門が喰い付いた。

「甘いのもいい!りんご飴とからくがきせんべいとか!!あ〜どれを一番に食べるか迷うなぁ〜」
「僕は勘ちゃんみたいに沢山は食べられないから考えておかないと。うぅ…どうしよう」
「雷蔵雷蔵!私も雷蔵が食べるやつを食べるぞ!」
「いや、お前は雷蔵以上に小食だろうが!!」
「豆腐一択だろう」

何をまず食べるかと盛り上がる五人に、祭りの会場に近くなり同じ方向に行く人が増えていく。
ちらちらと視線を向けられるのは男五人で浴衣を着ているからか、五人の容姿からか、はたまた煩いからか。
それらの視線に気づく事なく五人は祭の会場へと人の波に紛れて行く。
会場についてそれぞれが瞳を輝かせて見入る中でも、竹谷と三郎の手は離れることはなかった。


「あ!輪投げとか射的とかもやりたい!!」
「射的なら兵助だろ」
「ああ任せてくれ。何でも撃ち落としてやる」
「僕は型ぬきとかやってみたいなぁ」
「それだったら三郎だろ。器用だし。俺は金魚す」
「これ以上金魚増やしてどうするんだハチ!!」
「だって勘ちゃんが、この祭りはデメキンがいるってゆーからっ!!」
「もう水槽に入らないだろう」
「一回だけ……ダメ?」
「っっ!!あー…、っ一回だけだからな!私は手伝わないからな!!」
「おう!ありがとう三郎っ!!」
「三郎、はっちゃんに甘すぎ」
「甘いな」
「甘いよね…あ!僕、一番はあんず飴にしよう!」



end

私は大体、かき氷スタートのりんご飴フィニッシュです(`・ω・´)キリッ


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