頂*捧*企

□夏祭り
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11.スーパーボールすくい



手に持つのは小振りのお玉。
ゆっくりと流れる水面の、沢山ある丸いボールの一つに狙いを定める。
いくつかのボールを避け、狙いのボール付近の水ごとお玉で掬った。


「はーい!じゃあ兄ちゃんは2コねー!」

屋台の親父に渡された小さな透明の袋には大きいボールと小さいボールが入っている。
一つは狙い通り竹谷がお玉で掬ったもので、もう一つは一つじゃ寂しいからと屋台の親父がサービスでくれたものだ。
屋台の親父に礼を言い、少し離れたところで待ってた三郎の元に戻る。

「3コは余裕だとかドヤ顔して行って、取れたのは一つか…」
「う、うるせぇ!良いんだよ!!欲しかったのは取れたから!!」

やれやれとこちらを見遣って組んでいた腕を解いた三郎にすぐに言い返した竹谷だが、それに返って来たものは嘲笑だった。
豪語したのは自分であり、全く目標に届かなかったのも自分なのだから何も言えない、それが悔しい。

「くっ!昔はもっと上手かったはずなのに…!」
「はいはい。そうだなー」

本気で悔しがる竹谷を軽くスルーし、三郎が竹谷の持っていた袋の中のスーパーボールを突く。
一つは透明な大きなボールの中に何かの狸のキャラクターがあるボールと、もう一つは青い目玉のついた某積み重ねゲームのようなボールだ。

「こんなもの買ってどうするんだ?」
「…この間、怪我で匿ってた狸を山に帰したって言ったろ。あれ以来虎若達が寂しそうにしてるから…、代わり、とまではいかなくても気分が晴れればいいなって!」
「後輩バカ」
「それは三郎にも言えるだろ!!」
「…ったく、お前は」

呆れたように溜め息をついた三郎だったが、その顔は竹谷からみても優しいもので、それが自分に向けられてるのだと思うと何だかこそばゆい。
空気を変えるように持っていた透明な袋に手を入れて、青い方のスーパーボールを取り出すと三郎に突き出した。

「やるよ!」
「私は小学生か!!」
「えー!遊べば楽しいって!!」

いらん、と突き返してくる手を握ってその手に無理矢理青いボールを渡す。
竹谷の顔を見て色々諦めるような表情をした三郎が受け取る気配を見せたので竹谷は安堵して手を引いた。
すると、三郎がスーパーボールの持っている手を大きく振り上げて、地面へと投げつけた。

びよ〜ん

「うおゎっ!?ッぶっねぇ!!!」

下が土だったからは余り跳ね上がりはしなかったが、それでも竹谷の顔の横を通って行くぐらいの高さはあった。
ボールが何度か跳ねて止まり三郎がそれを取りに行く。
スーパーボールを持った三郎がこちらを振り返ったときの表情に、一瞬だけ固まって竹谷は本能に従って三郎から逃げた。
一瞬絡み合った視線は、悪戯心に輝いていた。



end

9月の忙しさが異常。
絶対9月中にも終わらないなこりゃと気付いた、そんな夏の終わりでした。

鉢竹のラブラブが夏休みを取ったまま帰ってこないのですが。
早く帰ってきてほしい(切実)

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