頂*捧*企

□夏祭り
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鉢竹月企画('14)
鉢竹 現パロ


【夏祭り】

01.誘う



太陽がジリジリとアスファルトを焦がし、その反射熱による熱気が周辺の空気を揺らす季節がやってきた。
夏である。

じぃじぃと残り短い命を一生懸命に鳴く蝉の声に竹谷は暑苦しい部屋の中でも頑張れー!頑張ってくれー!!と応援してしまうのは、小学校の時から続く生物委員の性みたいなものだ。
うちわをぱたぱたと扇いで自身に風を送りながら窓の外を見ると、きれいな青空と雲、この暑さの原因ともいえる太陽が見えた。

「いい加減この部屋にもクーラーを買え!」

そう文句を言うのは、部屋の主である竹谷を押しのけてこの部屋で唯一電動で風を送ることができる扇風機の前を陣取っている三郎だ。
遊びに来た客人とはいえ遠慮のないお客様である。
うちわだけの竹谷よりも暑そうにしていて、扇風機の恨みからざまぁみろと言いたかったが今後のことを考えて竹谷は胸の内にしまい、別の言葉を吐いた。

「今、バイトの金貯めてるところ!買えんのは11月ぐらいだな!」
「冬になってるだろうが!!」

暑い、耐えられん、と暑さに弱ければ寒さにも弱い三郎は嘆く。
そんな三郎に竹谷が冬は快適に過ごせるぜ!と胸を張れば、今じゃなきゃ意味がないんだよと怒られ挙げ句に冬にはハチの部屋に入り浸ってやると宣言された。
どうやら冬も三郎に空調機械は支配されるようだと、竹谷は諦めるように乾いた笑みを零した。

余りの暑さにゲームなどで遊ぶ気も起きず、もちろん夏休みの宿題をする気も竹谷限定で起きることがなく、二人でだらだらとテレビやDVDを見ていると軽快な機械音が部屋に流れた。
ピロリン、と音がして竹谷が携帯を見るとメールが一通届いている。
同じタイミングで三郎も自分のスマホを見ているところをみると、どうやら一斉通知のようだった。

「勘右衛門からだ」
「俺もだ…。えーとなになに『今日俺ん家の近所でお祭りがあるんだけど行こうぜー(≧▽≦)!!浴衣は兵助が持ってきてくれるって!雷蔵も来るって言ってたーー!!』……だとよ」
「雷蔵が行くなら私も行く!!…送信!」
「早ぇえな!!……俺も行く、っと」

竹谷がメールを送信してすぐに尾浜から返信が来た。
『三郎と一緒にいるんでしょ?今から二人でうち来る?そうめんだけどお昼ご飯出るよ〜(^∀^)』との内容にどうする?と画面を三郎に見せれば、三郎が自分のスマホから尾浜へと返事を送っていた。

「じゃあ俺勘ちゃん家行く用意するな!」
「おい待て。誰が行くと言った」
「は?だって勘ちゃん家に行けばクーラーついてるし、飯も出るしでお前も文句ねーだろ?」

立ち上がりかけた体勢で三郎の方を見て目をぱちくりとさせた竹谷に、三郎は鼻で笑う。
その態度に食って掛かろうとした竹谷の言葉に被せるように三郎は甘いな、と言った。

「甘い考えだなハチ。良く考えてみろ。外、熱いだろが」
「ん?……おう。そうだな」

だから?と首を傾げた竹谷に三郎はやれやれ仕方がない鈍い頭にもわかるように説明してやると、呆れたように首を振った。
明らかな説明不足の三郎の所為であるが、竹谷は大人しく三郎の言葉を待った。

「暑い中外を歩くのは嫌だ。もっと日差しが弱くなってから行く。だからハチ昼飯作れ、チャーハンな!」
「おいぃ!!俺の意見は!?無視っ!?つーか俺が昼飯作んのかよ!!?」

家に誰もいないんだろう、と言って扇風機とテレビに向き直った三郎に何回か抗議の言葉を投げるが全て無視をされた。
ピロリン、とまた音が鳴って携帯を覗けば『じゃあ二人は5時に家に来てねー(^▽^)ノ』とメールが送られていた。
決定事項になったそれに肩を落とした竹谷に三郎が昼飯まだかと声だけ向けてくる。

「てか何でチャーハン?」
「気分だ」
「……作んの熱ぃんだけど」
「知ってる」
「………………作ってきます」

無駄な押し問答に早々と諦めを見せた竹谷はすごすごとキッチンへ向かう。
諦めはしたが、三郎のチャーハンには激辛パウダーをたっぷり入れて逆襲してやると決めて部屋を出たのだった。



end

竹谷はガラケーでその他はスマホ。だから皆でLINEとかできない。
きっと竹谷がスマホを買えるようになるのは次の年になるでしょう。


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