頂*捧*企

*「負けない涙」の鉢にょ竹のその後を裏で
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【「負けない涙」の鉢にょ竹のその後を裏で】
鉢にょ竹



瞳を開け、寝転がった体を動かすと、全身がぎしぎしと痛む。
それでも何とか半身を起き上がらせて壁へと寄り掛かる。
石でできた壁は冷たく暗い、夜で月もない今日は灯りなど無いこの部屋では夜目に慣れた竹谷でも見えるのは自分の身の周り位だった。

体の力を抜くとかちゃりと手元から音が鳴る。
そこへと視線を向け、小さく零れる様な溜め息を竹谷は吐いた。
填められた手枷により手首は青い痣ができていて、それが何日間も拘束されていることを物語っている。
足も縄で結ばれていて大きな身動きはできない。

そして竹谷のいる場所は、冷たく暗い地下牢で、道具も全て取り上げられたので自力で逃げ出す事は難しい。
しかし竹谷に焦りはなかった。



とあるものを庇って敵に捕まって数日になる。
学園の課題を遂行している途中だった、何故、と聞かれれば竹谷は体が動いたからとしか答えられない。
でもきっと、それを知ったらある人物は馬鹿にするだろう。

学園から少し離れた場所にある盗賊の根城で救援が来るのを待つしかない状況。
竹谷には必ず来てくれると信じていた。


数日間、竹谷に与えられるのは少しの水だけ、殺さずに情報を聞き出そうという魂胆なのは見て取れる。
しかし、棒で叩いても拳で殴っても冷水を掛けても口を割らない竹谷に盗賊の方が焦りを見せ出していて、竹谷にとっては好都合である。
相手が感情を乱せば乱すほど、此方にとって手に取り易い状況になるのだから。
竹谷は痛む顔で笑って見せた。



鍵の開く音と扉の開く音に視線だけを動かして牢の扉がある方へと向ける。
夜の闇で、竹谷の淡黒色にははっきりとは映らない。
それでも人の入って来た気配に、相手に気付かれないように体に緊張を張り巡らせた。
石床から足音が響き竹谷の前で止まった。
僅かに顔を上げ見てみるが、竹谷には首から上は夜に隠れて見えない。


「おまえ、女だろ」

「っ!…はっ、馬鹿じゃねぇのっ、俺の、どこが女なんだよ」

降ってくる声に思わず体が震えそうになったのを堪え、強気に見返して馬鹿にするように笑った。
相手の男は喉の奥で笑い返すと、手を伸ばして来た。
体を捩らせてそれから逃れようとしたが、数日間痛めつけられた体は竹谷の思う様には動かない。

今まで気付かれなかったのに、と迫る手に起こる事を予想して瞳に恐怖が彩りぞわりと肌が嫌悪感に粟立つ。
拷問が終わった筈なのにおかしいとは竹谷も思ったのだ、こんな時間に何故一人でとも思ったが、こんな時間だからこそこの男は一人で来たのだ。

「男なら逃げること無いだろ」

「触んなっ!!っぐ、が、ごほっ!!」

男の声と触れそうな手に声を荒げて拒絶を示せば、全身に痛みが走り肺が苦しくて咳が出る。
痛みに身を屈めた竹谷にその手が届いて服の合わせへと指を伸ばす。
胸を隠す布の上部の地肌に触れた指にぞくりと背中が震え、淡黒色の瞳を一度大きく見張るとゆっくりとその瞼を落していく。
体の力を抜き抵抗の無くした体を壁へと沈める竹谷に、肌へと触れる手は止まる事はせずに竹谷の膨らみを隠す布上へと滑り落ちて来た。
やわりと触れてくる手に、竹谷は小さく息を吸うと震える唇を動かした。



「なにしてんだ、三郎…っ」



低く震える声を出せば竹谷の胸を弄っていた手の動きが止まって、衣の中から引き抜かれる。
再び視線を上へと向けた竹谷の目には、級友の顔を借りた男が何時もの掴みどころのない笑みを浮かべて先程より近づいた距離で竹谷を見下ろしていた。
その顔が少しだけ驚いたように動いたが暗い牢屋の中では竹谷には覗う事ができなかった。






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