綾タカ

□無防備な君
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無防備な君
綾タカ








忍たま長屋を歩きながらい組の二人の部屋を目指す。
手には、課題に大変役立った資料とそのお礼の和菓子を持って。
目的の部屋に着いて、声をかける。

「滝夜叉丸くーん。返しに来たよー」

少し待ってみるが、返事がない。
今日、これ位の時間に行くと伝えたのだが。
僕は首を傾げつつ、部屋の戸を開けた。
そこに居たのは、思いもよらぬと言うか、居るとは思わなかった人物。

僕は数秒、驚いて言葉が出なくなった。
何時も彼はこの時間は熱心に穴掘りをしていて、こんな時間には絶対に長屋に居ないと思っていたのだ。
そんな彼が部屋に居て、しかもすやすやと昼寝をしているのだ。

くるりと部屋を見回してみるが、目当ての人物はどうやら外しているらしい。
僕は資料と和菓子を机に置いて、寝ている彼へと近寄った。

「めずらしー。綾部君が居るなんて…」

僕はそのまま彼の横に座り、寝顔を見つめた。
毎日毎日、外に出て穴掘りをしているのに焼けていない白い頬にそっと手を当ててみるが、起きる気配はない。
なんでこんな時間に部屋に居るのかも気になるところだが、目を覚まさないのも気になった。

僕はまだ足音なんて消せないし、ましてや気配なんてもっと消せない。
それに比べて綾部君は、そう言う事には敏感だ。
ただ煩わしいのが嫌いなだけかも知れないけど。
そんな彼が、僕が来たのにも気付かず、触れたのにも気付かずに寝続けてるなんて。

もしかして、と思って額に掌を当ててみるけど、熱はないみたいだ。
僕が居るのは煩わしいことではないから起きないのかなって、ちょっと考えて、その考えに照れる。
そんな訳ないよね。


今だ眠り続ける僕の恋人。
その愛しい愛しい存在にを見つめ、僕は微笑んだ。


そして、その頬に


そっと口づけた。






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