綾タカ
□気付かないで
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気付かないで
綾(→←)タカ
綾部君はいつも穴を掘っている。
今日も穴を掘っている。
僕は立ち止まって彼を見つめた。
綾部君は一心不乱に穴を掘り続けていて、そんな彼の横顔に僕の胸は高鳴った。
これが何て言う感情なのかは分かっている。
初めて会った時、綾部君は僕を真っ直ぐ見て話し掛けてくれた。
彼にとってはたまたま僕だったんだろうけど、僕はあの時綾部君と知り合えてよかった。
始めは常に無表情で、綾部君には感情がないのかな何て思ったりもしたけど、滝夜叉丸君や三木ヱ門君などの特定の人には表情を見せるのを見て、僕もその内に入りたいって思ったんだ。
いっぱい話し掛けて、駆け寄って、そうしている内に綾部君から話し掛けてくれるようにもなって、僕は嬉しかった。
初めて笑ってくれた時は、もっと嬉しかった。
そして
僕は
恋に落ちたんだ
でも、この想いは絶対に言わない。
絶対に言えない。
僕が綾部君と友達になって色々と知っていく内に、綾部君は自分の興味ないものはどうでもいいのだと分かった。
関心すら持たずに無視する。
そして、嫌いなものや苦手なものには近づかない。
僕の想いが彼にばれたら、きっと綾部君は困って、僕には近づかなくなる。
僕はそれがとても怖いんだ。
そんな事なら、何にもならなくていいから、傍に居させて。
僕に話しかけて、笑顔を見せて。
二つも年上なのに、こんなに情けない僕の
この想いに
気付かないで
彼が僕の視線に気づき、こちらを向いた。
僕は笑顔を彼に向けて手を振った。
どうかお願い
気付かないで
end
→綾部さんの番
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