綾タカ

□こんな、出会い
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こんな、出会い
綾タカ 出会い








何時も其処で終わる。
何かを覚えてる訳ではない。
でも、
ああまたか、と目を覚ます。


その夢は
続きを持たない。












辻狩りをしていたその人は、そんな殺伐とした過去を持っているようには見えない笑顔で学園に編入して来た。
その笑顔が絶える日はなく、皆に、平等に、笑顔を振り撒く。
でもその笑顔に、裏は決して無い。

そんな彼が学園の誰からも好かれる様になるのは当然の事だった。




「君が綾部喜八郎君だよね?」

眩い笑顔で私に話し掛けて来たその人は、穴掘りを休憩中の私を覗き込むように見てくる。
私が何も言わずに彼を見上げていると、彼は焦って言葉を続けた。

「あっ!僕は四年は組に編入してきた、斉藤タカ丸です」

穴から這い出て来た私に、彼は手を差し出す。

「よろしくね。綾部喜八郎君?」

「はい。よろしくお願いします」

頷いて彼の手を握り返して彼を見ると、とても嬉しそうに微笑んだ。

「綾部君の噂はいろんな所で聞いたんだ〜。穴掘りの名人なんだってね!?」

懐から取り出した記帳には『タカめも』と記されており、それを開いて私を見た。

「早く学園の事を知りたいし、同級生の顔ぐらい覚えなきゃって回ってるんだけど、綾部君は有名人なのになかなか見付からなくて……」

「よく、私だと分かりましたね」

私と彼は今が初対面の筈で、彼が私の事を知っていたとしても顔は分からないはずだが。

「それはねぇ、前に滝夜叉丸君と一緒のところを見てね、滝夜叉丸君に聞いたんだよ」

とっても綺麗な髪をしていたから気になったんだと続けた彼は、少し照れたように微笑んだ。
その言葉に、その笑顔に、私は囚われる。




日に日に彼を見かける日が増える事に、ふと気付く。
それは、私が彼を無意識に探しているのだと、更に気付く。
何かに執着することなど久方ぶりで、私は私の感情を持て余す。

それでも、彼を見ると手を伸ばさずにはいられない。

笑顔を向けてほしい。
話し掛けてほしい。


あの夢の内容はなんだったか

私に知る由もない





end

→あとがき

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