孫富

□冬至の南瓜
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冬至の南瓜
孫富+三年生






今日のい組は、実技実習があったので他の組より夕食が遅くなった。
孫兵が食堂へ入って行くと、もう生徒も疎らにしか居なかった。
食堂のおばちゃんの所に行くと、今日は選べる定食ではなく皆同じ料理なのだと言って豪快に笑う。
夕飯を受け取って席を見渡すと、いつもの面子が孫兵に向かって手を振っている。
孫兵はそちらに向かい、作兵衛の隣に座る。
席を見渡すと皆まだ食べ始めたばかりの様だった。

「今日はろ組もは組も実習は無かった筈だけど、どうしたの?」

孫兵が疑問をそのままぶつけると、隣で大きな溜め息が聞こえた。
しかし答えたのは孫兵の対極にいた左門だった。

「また私と三之助が迷ってしまったのだ!それを作兵衛が探してくれて、夕飯がこんなに遅くなってしまった!!」

悪びれもせず笑顔全開で左門は言ったが、三之助は違った。

「俺は迷子になんかなってないし」

何言ってんだ左門と三之助は言うが、自覚が無い方向音痴は己の隣で怒気を膨らます作兵衛に気付いていない。

「っふざけんなぁあ!!お前ら二人とも俺が探さなかったら今頃夕飯食えてなかっただろうが!!左門はいいとして、お前は反省しろよ!三之助!!」

迷子二人に説教を食らわし始めた作兵衛は取りあえず置いておき、孫兵は自分の目の前にいる数馬とその隣に座る藤内に目を向ける。
藤内はその視線に肩を竦める。

「俺達もそんな感じたよ。いつもの如く穴に落ちて戻って来ない数馬を探しに行ったのはいいけど、今回の穴が中々救出難しい所にあって助けるのに手間取ったんだよ」

「ご、ごめんねぇ……いつも迷惑掛けて」

藤内の淡々とした説明に、数馬は泣きそうになりながら謝る。
そんな数馬に藤内は焦りながら、大丈夫だよ慣れているからと余り慰めになってない慰めをしていて、数馬は更に沈み込む。
孫兵はそんな同級生達をみて、今日も何時も通りだなと安心する。







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