現パロ
□まっくらの中で
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雷の音の間に三郎兄ちゃんらしき人の声が謝っているのが聞こえてくる。
外が雷の中、一人で残される方が怖かった俺はテレビを付けるが、雷で映像が飛んだり音が聞こえなかったりとあまりいい具合ではない。
それでもテレビを付けたままにしておくと、ニュースへと切り替わって、天気の注意報が流れる。
不安定な天気に雷と豪雨が明け方まで続くでしょうとアナウンサーが読んでいるのを聴くことしかできない。
怖いなぁという俺の呟きは、外の雷の音と再び番組へと切り替わったテレビの音にかき消されてしまった。
「ごめんねーハチ」
一人でソファで膝を抱えていると、二人の兄ちゃんが部屋へと帰ってきた。
雷蔵兄ちゃんに背中を押された三郎兄ちゃんが俺の前に立ったので、俺はそれを首を傾けて見る。
「…悪かった」
嫌々言ったのを隠しもしない三郎兄ちゃん。
俺は可笑しくて笑ってしまって、それに三郎兄ちゃんが生意気だと頭をぐしゃぐしゃと掻き回す。
雷蔵兄ちゃんは呆れたように笑って俺達にカップを差し出した。
「冷める前に飲んじゃおうね」
「はーい」
俺の返事に笑顔とカップをくれて、それを受け取って口を付ける。
カップの中は温かいレモネードだった。
「凄い雨と雷だよねー」
「この時期は仕方ないだろう」
「さっき、明け方まで続くって言ってたぞ」
仕入れた情報を言えば、雷蔵兄ちゃんにえらいえらいと褒められて頭を撫でられる。
嬉しくて顔が笑ってしまうのを押えられずにいると、また三郎兄ちゃんに見られていて。
どこか責めている様な感じた。
三郎兄ちゃんには雷蔵兄ちゃんに対してだけは心が狭いと俺はつくづく思った。
「うわぁ!」
ビクっと体を揺らして窓側が見えないようにソファの背に隠れた。
一段と大きい音が響いたかと思うと、低く響いて家が少しだけ揺れる。
怖くても、雷蔵兄ちゃんに抱き付くと三郎兄ちゃんに怒られるから一人で耐えるしかない。
ゴロゴロ続く音に終わりが見えなくて、耳を塞いで目もぎゅっと閉じる。
しがみ付く事はできないけれど、一人じゃなくて本当に良かったと思った。
音が小さくなった気がして目を開けると、少しだけ心配そうな顔をした三郎兄ちゃんが見えて俺は瞬きを繰り返す。
雷蔵兄ちゃんは先程から俺を安心させるように何度も頭を撫でていてくれている。
少しだけホッとして体の力を抜いた時、家の明かりが消えた。
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