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□咲き誇れ
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咲き誇れ
拍手文 綾タカ、孫富、鉢竹を含むオール







学園長の突然の思いつき。
これは何も、面倒だったり迷惑を被るものだけではない。
珍しく、本当に珍しく、生徒達も楽しめる行事もあるのだ。




本日快晴。
風もなく、温かい陽気に満ちている。



今日の学園はがやがやと賑やかだ。
殆ど毎日と言っていい程賑やかな学園だが、それが今日は生徒達がどこか浮足立っている様に見えた。

「おい!梯子なんか持って行く物目録になかったぞ平太!って、喜三太ぁ!!蛞蝓を壺から出すな!そこ、しんべヱ!!お前も長椅子を運ぶのを手伝え!!」

片腕に敷布を持ち、もう片手で長椅子を支えながら六年は組の食満留三郎は用具委員一年生たちに激を飛ばした。
何とも自由な一年生に毎回困らせられるが、最上級生として彼らを導かなければならない立場なのだ。
未だに梯子を持ってうろうろとしている平太に、用具倉庫に戻すように指示し、それに従って平太が用具倉庫に向かって行ったのを見送ると、入れ違いに野点傘を持った作兵衛が来ているのが見えた。

「どうだった、作兵衛?立台はあったか?」

留三郎の言葉にやや渋い顔をして作兵衛は答える。

「あるにはありましたが…、何台か壊れていて使い物になりません」

そうだよなぁ行き成りだもんなぁと心中で思いながらも留三郎は、時間がないので次の指示を作兵衛へと出す。

「分かった。じゃあ、使えるのだけ車の荷台に乗せて、その数だけ傘も出しておけ」

作兵衛が分かりましたと頷いて倉庫に向かうと、一つ大きな溜め息をついた。
これから行う事が嫌な訳じゃない。
寧ろ、楽しみでわくわくするぐらいなのだが、用具委員として準備する側も考えて欲しいと言いたくもなる。
発案者の学園長先生に、感謝と憾みという同時の感情を抱き複雑な気分になった留三郎は、静かに上を見た。

快晴の空には雲一つもなく、考えるのが馬鹿馬鹿しくなる。



「絶好の花見日和だな」


留三郎はそう呟くと、後ろから、蛞蝓を壺に仕舞いそれを小脇に抱えた喜三太と鼻水を垂らしたしんべヱが、手伝いますよ先輩!と寄って来るのを見て、荷物を荷台へと運ぶ作業を続ける事にした。






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