拍手文

□お内裏様とお雛様
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お内裏様とお雛様

拍手文 綾タカ













タカ丸は鏡に映る自分の姿を見て、深く、深くため息をついた。

ついでに少し乱れた前髪を指で軽く調える。

そして鏡の自分と目を合わせると、何とも言えない顔をした。



今、鏡に映っているタカ丸は女の姿をしている。

朱色の生地に艶やかな金の刺繍が施されており、重ね襟も赤を主に色取り取りと鮮やかに映えていた。

その十二単を着て、化粧の施されたタカ丸は、十人中十人が美少女と応える出来栄えだた。



「今更、逃げるなんて言いませんよね?」



自分の身姿に落ち込んでいるタカ丸は、後ろから声を掛けられるまで人が近付いてきた事に気付かなかった。

思わず肩を揺らしたが、声の相手が綾部だったのに安堵する。



「…だってぇ。なんで僕だけ女役なの?」



鏡越しに泣きべそを浮かべながら綾部へと縋りつく。

そんな綾部の姿も、何時もとは違っていた。

濃紺の袍に金の刺繍が施された束帯を着て、冠を被り手には笏を持っていた。

その笏を口元まで持ってくると、今だ鏡を見続けているタカ丸に目を合わせる。



「それは、くの一の為に忍たま達に雛人形になれと言った学園長と、じゃんけんで勝ったのはいいのに上段を選んできた挙句、喧嘩して最上段を私達に押し付けた滝夜叉丸と三木ヱ門の所為ですね」



これまでの経緯を事も無げに言ってのけた綾部は、澄まし顔だ。

鏡越しにそれを見ていたタカ丸は、後ろを振り向いた。



「だからって、僕と綾部君が反対でもいいじゃん!体格的にも!!」



「本来十二単は、背の高い人の方が映えるらしいですよ。タカ丸さんにも似合ってますし」



「でも、」



「それに私は、女装の授業で女の格好はしたくないです」



そ、それは僕も同じだよぉぉぉぉとタカ丸は鏡台へとうつ伏せる。

綾部は、そんなタカ丸の横に膝を付くと、笏を置いて、タカ丸の顔を上げさせた。

潤んだ瞳とぶつかり、綾部は微笑んだ。



「とても綺麗ですよ」



そう言って顔を近付けて、唇が触れる寸前で止める。

タカ丸はそれに瞼を数回瞬かせて、微かに首を傾げ、そんなタカ丸に綾部は呟いた。



「紅が落ちてしまうので、続きは終わってからにしましょう」



綾部は名残惜しげにタカ丸の頬にひとつ口付けると顔を離し、立ち上がる。

そして手を差し伸べると、少し遅れて手が重ねられるのに、綾部は恋人にしか見せない顔でもう一度微笑んだ。



「行きましょう、タカ丸さん」



「うんっ!!」



そう言って、お内裏様のお陰でやっと笑顔を見せたお雛様は、満開の笑顔を咲き誇らせた。











end



久しぶり過ぎて綾部まで見失った虚です。


何か、前に自分で攻めの二人は無口っぽいとか言ってたのに今回はよく喋りよる!!




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