シリーズ

□恋の手伝い
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恋の手伝い
ほのぼの三年生






結局、あの後左門は自力で伊賀崎まで辿り着く事が出来ず、俺が探すはめになった。
そしてしっかり左門を縄に繋ぐと、今度は伊賀崎を探す。

暫く学園内を探していると、人通りの少ない場所で伊賀崎が座っているのが見えた。
俺は左門にその事を言おうとしたが、その前に左門が伊賀崎に向かって走り出す。
流石にこの距離なら迷子にならないと思い、俺は手の縄を離した。

「孫兵!」

左門の声に伊賀崎が顔を上げる。
あまり抑揚のない声で返事があった。

「何」

左門は伊賀崎の反応に気にすることなく話し掛ける。

「今日は委員会は終わったのか?こんな所で何してるんだ?」

「委員会が終わったからジュンコと遊んでいたところ。ここは静かで落ち付けるから」

「そうか、私たちも一緒に居てもいいか?」

左門の言葉に少し離れた所に居た俺に気付き、目が合う。
俺は取りあえず伊賀崎がいる所へと行くと、伊賀崎が口を開いた。

「……別にいいけど。珍しいね、二人だけって」

俺と左門を見て言うが、別に何時も三人で行動してるわけじゃねぇしと俺は答える。
それに左門が、三之助は部屋でごろごろしてると続けた。
伊賀崎はそうと頷くと、俺達に座ればと促した。

今まで地面に這っていたジュンコが、伊賀崎の腕を伝って首元に絡みついて俺達に場所を開ける。
なんて言うか、出来た毒蛇だ。
俺がジュンコを見ていると、伊賀崎は何か勘違いしたみたいだった。

「怖い?」

「いや、怖くねぇけど。ジュンコって凄いなと思って。なあ、触ってみてもいいか?」

俺の言葉に、伊賀崎が珍しく驚いた表情を見せた。
ジュンコ、と伊賀崎が言うと、ジュンコは少し首を擡げて俺の方へ顔を寄せる。
俺は頭の辺りをそっと触ってみる。

「……へえ、蛇って案外温かいんだな、もっと冷てぇのかと思ってた。肌触りも気持ちいいな」

俺が笑ってジュンコを撫でてると、左門が同じ様にジュンコを撫でる。

「蛇は変温動物だからな!外の気温と同じぐらいの体温なんだぞ!!」

「へぇ、そうなのか。って、なんで左門がそんなこと知ってんだ?」

「前に孫兵に聞いた!な〜、ジュンコ〜」

左門は更にジュンコを撫でだした。
俺は少し名残惜しかったがジュンコから手を離す。
いや、本当に癖になりそうな肌触りだった。


「お前たち、変わってるな」

聞こえた言葉に、伊賀崎の方を見ると少し嬉しそうにしている様に見えた。
愛毒蛇を褒められる事は伊賀崎にとって、嬉しいことみたいだ。
俺は、伊賀崎と言う人間が少しだけ分かったような気がした。








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