05/16の日記

23:22
鉢竹
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最近体調が悪い。
思ったように動かない体や突然有り得ない行動を起こそうとする思考に三郎はほとほと参っていた。
医務室に行っても、伊作に時間が解決してくれると笑われるだけで治療もなにもなかった。

「三郎、機嫌悪いね」
「……雷蔵!」

雷蔵が部屋に帰ってきたのにも全く気配も感じなかった。
前までなら足音だけで気付き、雷蔵が入る前から迎えの体勢に入るというのに、その足音すら聞き取れない程自分の体調は悪いのかと思うと落ち込んでくる。

「雷蔵、私は、」
「あ!三郎部屋にいた!?」

三郎の言葉を遮ったのは雷蔵の後ろから顔を覗かせたのは竹谷で、探してたんだよと笑いながら近づいてくる。
思わずそれに逃げの姿勢になってしまい、竹谷が怪訝そうに眉根を寄せた。

「三郎…?」
「な、なんだ!?何か用か?」
「…おい。なんで逃げようとしてんだよ!?あ!おい!?三郎っ!!」

走って部屋を駈け出して竹谷の接近から逃れた三郎は、やはり自分の体調はおかしいのだと確信する。
竹谷と一緒にいると何故だかむずむずするのだ。
それが恥ずかしくて、照れくさくて、嬉しくて、まともに顔も見れない。
こんなの変だと、騒ぐ心臓の上を押える。

「三郎!お前どうしたんだよ!?」
「っ!!触るなっ!!」

考えごとをしていた三郎は竹谷に追いつかれて腕を取られた。
その熱に驚いて、思わずその手を振り払ってしまった。
驚いた顔をした竹谷の瞳に悲しみが過ったのを見て、ひやりと腹の底が冷える。
それ以上竹谷の顔を見れなくて視線を外せば三郎の腕を掴む竹谷の手が目に入る。
すぐに放されると思った竹谷の手は、更に強く、三郎の事を掴んだ。
強い力につられたように、三郎は逸らせていた視線を竹谷に戻せば、悲しみの色を押し隠した淡黒色が真っ直ぐに三郎を見ていた。

「三郎、さっき善法寺先輩から聞いた。お前、体調悪いんだろ?」
「…っ」
「無理すんなよ」

そう言って笑った竹谷は気遣う優しさを感じさせる動きで三郎の腕から手を離した。
離れていく竹谷の手を寂しく思う胸の内に、苦いものが浮き上がってくる。
それすらもよく分からない感情で、唇を噛みしめる。

「早く部屋に戻って休めよ」

それだけ言って竹谷は三郎に背を向けてしまった。
無意識に手を竹谷に向けて、その腕を引く。
驚く顔に三郎も驚いて、でも手は自分の意志とは関係なく竹谷に伸ばされる。
竹谷の顔へと自分の手を近付ける行為に、心臓の騒ぐ音が煩くなる。

「…三郎?」

不思議そうな竹谷の声に、肌に触れる寸前の手が止まった。
頬の横にあった手を竹谷の肩に移動させてその場に手を置く。

「お前に心配されんでもすぐに治る。……悪かったなハチ」
「……おう!」

何時もの三郎だな、と竹谷が笑うのに三郎は内心を隠して笑う。
自分の感情を隠すのは慣れている。
だから大丈夫だと、訳も分からず自分に言い聞かせた。



恋心準備中



end

乙男な三郎ですが、鉢竹です。
鉢(→)竹ですけどね。

自分の気持ちに気付くまで一人でアタフタする三郎とか面白いと思います。
でも気付いたら開き直って突っ走ると思います。

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