PSYCHO-PASS サイコパス

□俺と槙島の四日間・裏(槙島聖護×狡噛慎也/R18)
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 ヘッドボードのパイプから伸びた麻縄で、束ねられた両の手首は頭の上だった。横を向いて膝を少し曲げる体勢で、狡噛はベッドに寝かされている。白いシャツ一枚だけを纏った狡噛の後孔からは、ピンク色の棒状のものが生えていた。
 自尊心は、ズタズタだった。

「『夜は、人を惑わす』」

 槙島は、僅かに開いたカーテンの隙間から夜空を見上げた。窓越しから届いた月光が槙島にベールをかぶせると、彼の姿は女神のような神聖な美しさを醸し出す。こちらに向かって微笑んだ槙島の表情が酷く儚く見えて、狡噛は自嘲した。
 触れただけで壊れる。この男に限ってそんなこと、ありはしないのに。

「『昼間は太陽の下で、しっかりと紳士の振る舞いをできる者さえ、夜になれば、星のまたたきの幻惑に誘い込まれる』」
「…………」
「僕も君も、紳士かどうかは怪しいけどね」
「……ありえねぇ、な」

 俺もお前も、と。狡噛は、掠れた声でうわごとのように呟いた。
 窓際からベッドに近づいた槙島は、狡噛の頬をさらりと撫でた。見た目にもはっきりと疲労の色が滲んでいた狡噛だったが、不幸にもまだ、不快感に顔を背けてしまう程度の体力は残っていた。
 おかげでまた、奥深く挿入された異物に内壁を擦られてしまう。たっぷりと時間を掛けて馴染まされてしまった彼の後孔は、肉の棒ですらない合成樹脂の張形でさえ、大きく口を開けて美味そうに銜え込んでいた。

「…………っ!」

 狡噛は、性感にぐっと息を詰めた。もどかしい快楽が、そのの体をびくりと跳ね上げる。拍子に引っ張られた麻縄が、また、彼の手首にぎちりと食い込んだ。
 擦過傷を増やした狡噛の手首に、槙島は触れる。するりするりと愛撫した細い指先は、狡噛が痛みに奥歯を噛み締めても離れていく気配はない。

「大人しくしてろって、何度も言ってるのに」

 残念そうに溜息をついた槙島は、狡噛の後孔から生える張形を握った。そして、当然のことであるかのように後孔を出し入れし始める。単調に見えたピストン運動は的確に弱い場所を擦って、それはそれは簡単に、狡噛の呼吸を乱していった。
 充分に垂らされたローションが、ぐちゅぐちゅと濡れた音を響かせていた。

「は……っぁ……っ……」

 狡噛の体は、小刻みに痙攣を始めていた。体の奥底からじわりじわりと染み出すような快楽は、いくら首を振っても誤魔化せない。まだ直接触れられていないにも関わらず、その果実は少しずつ存在を誇示し始めていた。
 槙島は手を休めず、楽しげに微笑を落とした。

「気持ちいい? 腰が動いているね」
「ひぁ……っ!!」

 探り当てられた一点をごりと擦られては、堪らなかった。抑えきれずに女のような嬌声を上げた狡噛は、背中をぐっと弓なりに反らせていた。強く強く、達していた。
 それは、いつもの吐き出すだけの性感ではなかった。吐き出すより先に直接中で爆発するような、暴力的すぎる絶頂感。おまけに、普段は一瞬で治まる快楽が中々身体から抜けていかず、狡噛は激しく身悶えた。

「あぁっ! あぁあーっ! ああぁ……っ!!」

 何度も絞り出すように嬌声を上げた後、脱力した狡噛はベットに沈んだ。酸素を求めてはあはあと乱れた呼吸を繰り返すが、目眩はなかなか治まらない。
 槙島は、気にも留めてはいないようだった。彼は何事もなかったかのように、再び張形を握り込む。今度は狡噛の中をあまり大きく出し入れはせず、こりこりとした奥の一点だけを狙って、ぐりぐりとこすり付けるように動かし始めた。

「や、めろ……っ、ふあぁっ!」
「もう一回、だ」

 槙島がたしなめるように言葉を紡げば、狡噛の腰がまた跳ねた。いつもなら急激に冷める体が、更に熱を持ったことを自覚する。狡噛が感じたのは、未知なる領域への困惑とおそれ。しかし、それらも襲いくる快楽に少しずつ溶かされていった。
 狡噛はそれでもまだ、ほんの僅かに残った理性を必死に保っていた。ここで堕ちてしまえば、一生戻れない。そんな予感があった。

「んっ……! あっ、あぁぅ、あぁああ……っ!」
「可愛いよ、狡噛」
「なん……っ、だと……んくぅっ!」
 
 柔らかい声音で耳元に囁かれて、狡噛の体は怒りと羞恥に震えた。まぶたをこじ開けてぎっと槙島を睨みつけてーー思わず、瞠目した。
 槙島は、優しく優しく微笑んでいた。穏やかに、穏やかに。まるで、狡噛が愛する存在であるかのように。まるで、護りたい存在であるかのように。
 狡噛は一瞬、怒気を抜かれた。 

「あああぁあぁぁあっ!!」

 呆けていたところに果実を握り込まれて、狡噛は絶叫した。槙島の掌はそのまま、奥を突かれたままの狡噛の果実を容赦なく扱き上げる。
 辛抱など、利かなかった。

「イってみせて」
「ゃ……い……やだあぁ……っ!!」

 真っ白になった。
 びゅるびゅると大きな音を立てて、狡噛の果実は白濁した液体を噴出した。そのまま果実を扱き続ける槙島の手の動きに合わせて、液体は緩急を付けながら勢いよく発射され続ける。白いシーツをぼたぼたと汚し続けるだけでは飽きたらず、狡噛自身の腹部までもをぴしゃぴしゃと濡らしていった。
 全てを出し切るより、体が限界を迎える方が早かった。薄れてゆく意識の中で、狡噛は、天使の笑みに闇が堕ちるのを見た。
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