PSYCHO-PASS サイコパス
□俺と槙島の四日間・裏(槙島聖護×狡噛慎也/R18)
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<一日目・夜>
ガリッという鈍い音と、互いの間でかすかに溢れた鉄の香り。少しは驚くそぶりを見せた槙島だったが、重ねていた狡噛の唇からは思いのほかゆったりと顔を上げた。どこか残念そうにため息をついた槙島の口端は、血でにじんでいる。
純白を穢したそれは、まるで、なまめかしいルージュの色だった。
「そんなに拒絶しないでくれないか、狡噛」
「当たり、前だ……っ!」
「傷付くね。すぐに、君もよくなるに決まっているのに」
多分、薬を使われている。ベッドの上でろくに動けずにいる狡噛は、仰向けにさせられた自分の体の上にいる槙島を強く睨みつけた。音のしそうなほどに怒気の孕んだ瞳で突き刺しても、槙島は一向に動じない。むしろ、無邪気に楽しそうでさえあった。
「つれないね」
穏やかに微笑んだ槙島は、まず、狡噛の首のネクタイをしゅるりと解いた。襟からはそれを引き抜かないまま、次に槙島のしなやかな手指はワイシャツの釦に下りる。ぷつりぷつりと開かれていく前身頃に、流石の狡噛も顔色を変えた。
「……なに、を」
更なる抵抗を重ねようとした狡噛の肢体は、やはり、拘束をされていないにもかかわらず満足に動くことはできない。ジャケットごと大きく開かれて露になった筋肉質の体に、槙島の掌が伸びた。
男性らしいがゴツすぎないその首を締め上げるかのように、槙島の両の掌が狡噛を包んだ。しかし、強い力は込めないままだ。暫くは体温と筋肉と骨の感触を楽しんでいたらしい槙島は、隆起した鎖骨を指先でなぞりながら、スーツのよく似合う張り出した胸筋にするりするりと掌を滑らせていく。
嫌悪感に、狡噛の肌がざわりと粟立った。
「――『お前たちの計画の裏をかくくらい朝飯前だ。』」
「やめろ……!!」
「『お前は、奴らの仲間、あいつらにとっては宝のようなもの、しかし、今こうして私と一緒にいるではないか。』」
右手で片側の胸の突起を弄びながら、左手でしっかりと割れた腹筋を撫でる。狡噛を蹂躙する槙島は、酷く恍惚とした表情をうかべていた。
狡噛が、悪寒の中に嫌な気配を感じ出したのはこの頃だ。
「『しかも、私の肉と血とお前の肉と血が触れ合っている。私の欲望を満たしてくれる相手となってな。』」
「……っ!?」
にこり。笑った槙島が、自身の腰に巻いたベルトのバックルに手をかけた。ファスナーを下ろした黒いデニムの隙間からずるりと果実が取り出されると、瞠目した狡噛の背に冷たい汗が流れた。
「『時が経てば、お前も立ち直り、永久に私の良い伴侶となって、私を助けてくれるだろう。』」
ぎりりと奥歯を噛んだ狡噛の目の前で、槙島は自らの果実を数回上下に扱った。綺麗な顔に似合わないサイズのそれはすぐ、槙島の手の中で鎌首をもたげ始める。
ほうと濡れた吐息をこぼした槙島は、空いていた左手でシーツに置かれたままの狡噛の右手を取った。まるで、王子が姫をエスコートするかのように導かれた先で……狡噛はその掌に槙島の果実を握りこまされた。
「離せ、くそ……くそっ!!」
「ねえ。狡噛……っ」
狡噛の右手ごと果実を握った槙島は、ただそれだけで声を上ずらせた。果実は急激に熱と質量と硬度を増し、今にも弾けそうにどくどくと脈打っている。
嫌悪、怒り、殺意――。ないまぜになった感情を狡噛に叩きつけられても、槙島には効力がない。今の彼は、狡噛から受けたもの全てが喜びに変わっているかのようだった。
「君がこうするときは……っ、一体、誰が相手なの、かな」
「黙れ……!」
「やっぱり、君の可愛い上司かい……?」
「やめろ……っ!!」
勢いよく、狡噛の左拳が持ち上がった。だが、それは槙島の頬にぶち当たる直前で力を失って、ぱたりとシーツに落ちる。しかし、それでも純粋な殺気のみを孕んだ獣の瞳だけは、力を失うことなく槙島を睨みつけ続けていた。
「ああ……たまらないよ、狡噛」
殺気にあおられた槙島は、鈴口を親指の腹でぐるりと弄った。背中を反らせて快楽を味わう槙島の呼吸は、ぐずぐずと崩れそうに熟れて、とろけきっていた。
ぞくりと再び狡噛を襲った悪寒は、このとき既に不快なものだけではなくなってきていた。感じてはいけない何かを覚えた気がして、狡噛は持ち上がらない拳を握った。もう、強くは握ることができなかった。
「狡噛……狡噛、こうがみ……っ」
二人で果実に重ねた掌を上下に動かし始めると、槙島の体はびくびくと痙攣した。狡噛も同じようなモノを持っているから余計によく判る。更に膨らんだ果実はもう、限界に近い、と。それを直に知らされた狡噛はただ、唇を硬く引き結んだ。
何をしても喜ばせてしまうなら、何もしないのがせめてもの抵抗だった。
「く…………ああぁ……っ!!」
白い喉を晒して、槙島は達した。腰を何度も震わせて、白濁した液体を狡噛の腹に浴びせた。