進撃の巨人
□雪の日の思い出(リヴァイ×ペトラ・ラル/ほのぼの)
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「リヴァイ兵長、温かいココアをお持ちしました。本日は寒いですから」
「……ああ、悪いな」
リヴァイには珍しく、書類を前にどこか少しぼんやりとしているようだった。トレーから書斎机にマグカップを置いたぺトラは、彼の視線を追って窓の外を眺めてみる。そこは、この冬初めての銀世界だった。
「暖炉の前から。動けなくなってしまいそうですね」
「……ああ」
「……兵長?」
「…………」
羽ペンを手にしたままで頬杖をついているリヴァイの表情は、そのままだった。悲しい顔ではないはずなのに、その横顔を目にしたペトラの胸はなぜだか少し締め付けられた。
思わず、手にしていたトレーをぎゅっと抱いたペトラだったが、切ない表情は意識して微笑へと形作られた。ペトラは、リヴァイの傍をすり抜けて数歩先の窓の際へと立った。
「……私」
「……」
「雪って、食べたら甘い味がするんだって思ってました。子供の頃」
ペトラは、窓の外に向けていた視線を体ごとくるりと振り返った。
「変ですよね」
ふふ、と笑ったペトラの向こうで、リヴァイはほんの僅かに目を細めた。ゆっくりと苦笑に代わって言ったリヴァイのそれに、ペトラはまたひとつ笑顔を見せる。
「ああ、変だな」
「兵長ー? そこは『違う』って言ってくださるところじゃありませんか?」
「……だが」
冗談交じりに口を尖らせるようにしたペトラに、珍しくリヴァイは少し楽しそうな表情を見せる。足を組み替えてから、彼は一度切った言葉を繋いだ。
「いいんじゃねえのか?」
一度瞠目したペトラは、ぱっと頬を染めた。そして、満面の笑顔で大きく頷いた。
「はい……っ!」
201408182220
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