storyletter.

□オモイトドクマデ。
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いつからだろう。


僕が床に伏したのは。

あの人に背中を預けて戦えなくなったのは…





毎日毎日うすらと開いた襖の間から見える景色ばかりを見ている。



そんなんだから、気づけば考え事ばかりしてしまっている自分がいて…。







「いるんでしょ、千鶴ちゃん?はいりなよ。」





襖戸に小さな人影が映り、それが誰かすぐ察しがついた。





「沖田さん…起きていたらまた近藤さんや土方さんに怒られちゃいますよ…」





「うるさい。」





ぴしゃり、と言ってのけると少女はふぅ、とため息をついてこちらを見やる。



どうも困ったような顔だ。



でも僕にはそんなの関係ない。





「ねぇ。千鶴ちゃん」




「は、はい」





「鬼副長さん呼んできて」




「土方さんは…



先ほど目覚められたばかりで…少しお機嫌が…」
「うるさいな。早く呼んできてよ。殺すよ?…」



あまり僕自身も体調は良くなかったが、思い切り強がって彼女を脅した。


青白い顔で全く迫力なんかなかっただろうな、


彼女が去った自室をぐるりと見回しながら小さく自分を嘲笑った。







「総司、」








ほどなくして土方さんが僕の部屋を訪れた。




用もないのに毎日毎日呼びつけて、僕だって悪いと思わない筈がない。





だけど…






「土方さん…遅いですよ。もうこんなに体冷え切っちゃいました」




小言を言いながら土方さんを見上げる。



「ふっ…そんだけ憎まれ口叩けりゃ今日は気分良いみてぇだな。」




どかっ、と僕の布団の真横に座れば顔色を計るようにして話しかけてくる。






「土方さん」


「あ?」


「僕暇なんですけど、かまって下さい。」

「はぁ?」

「だーから暇なの。耳まで悪くなりましたか?土方さん」





「ぁあ?」

顰めっ面で僕を睨みつける。
その顔が僕は大好きで…

素直な方じゃないから、「かまって貰ってる」って勘違いだけで別にいいんだよね。











「総司…





お前グダグダ言ってねぇで横んなれ。


顔真っ青じゃねぇか。この馬鹿野郎。」




口は悪いけど…
僕のことはすぐなんでも気づいちゃうんだよね…




-ほんとはもっといっしょにいたいのに-

-もっとお喋りしてたいのに-

-ほんとは…-







ボクノキモチ
シッテルクセニ。





「土方さんのばぁか。」



「ば、ばかっていきなりなんだオイ。」




桜を一緒に見るのが夢だったけど…
僕はいつまでこの世にいられるか解らない。

春が来るのを待ちながら貴方が遠くに、段々遠くに行ってしまうのを…


僕は床に伏して見ていることしかできないんだよね。


春よ恋い
春よ来い




春がこんなに恋しいと、待ち遠しいと思ったのは…








end.

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