長編小説

□星の色がわからない。
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―side崇

 『…僕、違うところで待っててもいい?』
少し、大きめの声で話す。

由衣子がうまく聞こえないのも仕方がない。
それくらい、すごい人の数で溢れてる。
 『ああ!うん、いいよ!大丈夫!別れよう!』

それでは、お言葉に甘えて、しばしの間別行動。

 『…それじゃあ、僕向こうにいるね。浸治はどうする?』
 『あ、俺も。』

そう言って、僕らはそそくさとその場を後にする。
今日は由衣子と僕、そして浸治と中原で買い物に来ていた。
なぜ四人で?と、思うところがないでもないが、まあ構わない。由衣子がいれば、僕はそれでいい。
たぶん、由衣子もいいし、中原もいいだろう。だって、今日のこの日を決めたのは二人だから。だから、イヤなのは、それはきっと浸治。

 『うん、それじゃあ終わったら連絡いれるか何かするね!』
 『ごめんね、浸治くん。』
上機嫌の由衣子と、少し、申し訳なさそうな中原。

僕らが前を通りかかると、下着屋には「SALE」という文字が、まるでセールに群がる人間と同じような調子で、所せましと貼り付けられていた。
その状況を二人がその目に映し、結果、今の状況に至る。

そうして、僕は二人に軽く笑み、背を向けて歩き出した。
僕の歩みに少し遅れて『うん、いいんだよ。』と答える浸治の声。きっと、カスタードクリームのような笑顔をしている。

なんだか、ああ、世界はまあるいんだったな、と実感できる気がして、二人じゃなくて、四人もいいかもしれない、とふと思った。

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