短編小説

□星のない空
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彼は、思い出したふりをするように、微笑んだまま目を伏せた。

 『僕は、そこにいた。
例え、ではなく、僕はそこにいたんだ。それは、とても生きてはいられない所なんだよ。死にたい、とは思わない。死のう、と思うんだ。そして、それは、実際に死んでしまうということなんだ。』
そこで彼は言葉を切り、ストーブに手をあてた。

 『それはとても広い所の時もあるし、とても狭い所の時もある。いつのまにか僕は移動する。
例えば路地裏、例えばどこかの学校の校庭、例えば家と家の間の道。そして、僕は一人。』
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