時夢の狭間・長編

□蔵馬夢・8
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「今度行く時は、オレも一緒に行くからな」

「……うんっ!」

 サキは、ぱぁっと明るい笑顔へと変わると、蔵馬の手を引っ張って人間界へと向かって行った。
 途中、サキは妖力をB級以下に押さえて封じると、蔵馬とサキは次元のひずみを渡り、人間界へと入る。

 普通の狐へと変化すると、サキの案内とともに、いつものイナリ寿司屋さんへと向かった。





 お醤油の香ばしい香りとともに、ほかほかと炊けるごはんと独特の甘辛く美味しそうな油揚げの香りが辺りに立ちこめている。
 店の裏口へとまわると、いつもの生け垣の下へと身を隠した。



 くるるぅっ。

「……蔵馬?」

 鳴ってしまった自分のお腹の音に、蔵馬は恥ずかしそうに、ふい、とサキから顔を反らす。

(この香りは、毒だな)

 本人は否定しているが、蔵馬もイナリ寿司が大好きだったりする。
 なので、蔵馬がイナリ寿司を食べる時、嬉しそうにパタパタと尻尾が動いてしまっている事も、サキだけの秘密だ。



 きいっ、と裏口が開き、イナリ寿司屋さんのおばあちゃんが顔を見せる。
 サキは生け垣の中から、ひょこ、と顔を出した。

「おや、また来たんだねぇ。」

 優しそうなやわらかいその声に、蔵馬も恐る恐る、顔を出す。

「おやおや。つがいだったんだねぇ。」

 一回り体の大きい蔵馬を見て、おばあちゃんは狐の夫婦(つがい)と判断してしまった様だ。
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