時夢の狭間・長編
□蔵馬夢・6
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――けれど、それ以上に、蔵馬の中には、沸き上がって来る思いがあった。
もう絶対に、手放したりしない。必ず助けて見せる。
あの時に感じた、心を引き裂かれる様な別れを思い返しながら、蔵馬は心の中で強くそう決意した。
†
「ひでェな……」
見渡すかぎり虫だらけの街の中で、幽助が嫌そうに顔をしかめながら言った。
ポチは迷惑そうに尻尾でパタパタと虫を払っている。
サキは蔵馬達とは別行動を取り、幽助達と一緒に街の様子を探りに来ていた。
――昨日、あんな事があったから……目を合わせ辛かった。ので、サキは少しほっとしていた所もあった。
(蔵馬、大丈夫かな)
幽助も、同じ事を考えていたらしく、口を開く。
「穴の中心を見に行った蔵馬達は大丈夫だろうな――」
「蔵馬はお前と違って安心だ。ヘタなマネはせんよ」
心配して発言した幽助に、幻海は嫌味っぽく返答する。
「信用ねーな、クソ!」
吐き捨てるように文句を言った幽助に、幻海はサキをちらりと見て口を開く。
「それに、サキが心配で、深入りはせんだろうからな」
「幻海師範っ……!///」
「お、何だお前ら、そーゆー関係か?」
少し赤くなりながら幻海に反論するサキに、幽助が興味深げに質問する。
「関係というか、何というか……///」
「おぉ、そりゃよかったな!」
昨日の……事もあり、声が小さくなって行くサキの背中を、少し乱暴に叩きながら幽助は嬉しそうに笑った。