時夢の狭間・長編

□蔵馬夢・6
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「……やっと会えた」



 ふいに、涙がぼろぼろと溢れ出した。
 張り詰めていたものが壊れて、流れ出してしまったかの様な感覚だった。

 この腕の中に帰りたかった。
 何度、夢見た事だろう。

 涙を流すサキの頭を、蔵馬はただやさしくなで続けた。



「気が付いた様だね……」

 サキが少し落ち着いた頃。す、と障子の開く静かな音とともに、幻海が部屋へと入って来た。
 独特な香を放つ薬湯を蔵馬とサキの前に差し出すと、幻海は言葉を続ける。

「さぁ、この薬湯を飲みな。少しは気が落ち着くはずだ」

 蔵馬に続いて頭をぽんぽんとなでながら、幻海はやさしくサキに微笑みかけた。








「――では、“邪玉”の封印には成功したんだね?」

 サキが落ち着くのを待った後、幻海達は本題を話し合っている。

「はい。今、思い出した限りでは、おそらく」
「オレも、サキが封印された封印玉を、この手で――」

 幻海の質問に蔵馬とサキは返事をした。
 蔵馬の手はわずかに震えている。サキはその手に自分の手をそっと重ねた。

「ごめんね……ありがとう、蔵馬」


「――では、なぜ“サキ”の封印が解けたのだ? やはり、魔界の穴が開き始めた影響なのか」

「邪玉の事、気付いていたんですね。幻海師範」

「はっきりと分かっていたわけではないがな。最初にサキ……お前に会った時、深い闇の力を感じたんだよ」



 そう、あまりに危険で、体が震える程の邪の力。邪玉の事をはっきりと知ったのは今が初めてだ、と幻海は言った。

 サキは、不安そうに幻海に質問する。

「“邪玉”の封印も、解けてしまうのでしょうか?」


――しばらくの沈黙の後、幻海はぽつり、と言った。
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