時夢の狭間・長編
□蔵馬夢・5
4ページ/9ページ
(少し、早く来すぎたな)
なぜか少し緊張している自分に違和感を感じながらも、蔵馬はサキを待った。
「蔵……南野くん?(人前なので)」
「あ、サキ。早かったね」
ほどなくしてサキがやって来た。
二人は喫茶店を出て、お寺へと向かう。
お寺へと続く長い階段を上がりながら、蔵馬が口を開いた。
「妖狐……」
「えっ!?……きゃっ」
思わず階段から足を踏み外したサキを蔵馬が支える。
「今日オレ達が師範に呼ばれたのは、オレ達が見た同じ夢についてだと思います」
「同じ? じゃあ、蔵馬も?」
「あれは、サキの記憶?」
「うぅん……分からない。けど、あの銀色の妖狐の事を“蔵馬”って私……呼んでいたみたいだった」
「たしかに、その銀色の妖狐はオレです。じゃあ、オレが“サキ”って呼んでた青銀色の妖狐は、サキ?」
「違っ……。え?アレ、蔵馬……!?」
しどろもどろになって固まってしまったサキを見て、蔵馬は“幻海師範の所で話をするよ”と言った。
蔵馬はサキの手を引いてお寺の中へと入って行く。
「来たか」
幻海はそう言って、少し広い和室へと二人を案内した。
「さて…まずどこから話せばよいのか…。」
そう言って、幻海は二人に茶と茶菓子を出す準備をしながら続ける。
二人に粗茶と干菓子を出し終えると、幻海は静かに口を開いた。
「サキ、蔵馬。お前達は自分の運命を受け止める覚悟があるか?」