時夢の狭間・長編

□蔵馬夢・5
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(少し、早く来すぎたな)

 なぜか少し緊張している自分に違和感を感じながらも、蔵馬はサキを待った。



「蔵……南野くん?(人前なので)」
「あ、サキ。早かったね」

 ほどなくしてサキがやって来た。
 二人は喫茶店を出て、お寺へと向かう。





 お寺へと続く長い階段を上がりながら、蔵馬が口を開いた。





「妖狐……」
「えっ!?……きゃっ」

 思わず階段から足を踏み外したサキを蔵馬が支える。

「今日オレ達が師範に呼ばれたのは、オレ達が見た同じ夢についてだと思います」
「同じ? じゃあ、蔵馬も?」

「あれは、サキの記憶?」
「うぅん……分からない。けど、あの銀色の妖狐の事を“蔵馬”って私……呼んでいたみたいだった」

「たしかに、その銀色の妖狐はオレです。じゃあ、オレが“サキ”って呼んでた青銀色の妖狐は、サキ?」
「違っ……。え?アレ、蔵馬……!?」



 しどろもどろになって固まってしまったサキを見て、蔵馬は“幻海師範の所で話をするよ”と言った。
 蔵馬はサキの手を引いてお寺の中へと入って行く。





「来たか」





 幻海はそう言って、少し広い和室へと二人を案内した。

「さて…まずどこから話せばよいのか…。」

 そう言って、幻海は二人に茶と茶菓子を出す準備をしながら続ける。


 二人に粗茶と干菓子を出し終えると、幻海は静かに口を開いた。


「サキ、蔵馬。お前達は自分の運命(サダメ)を受け止める覚悟があるか?」
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