時夢の狭間・長編
□蔵馬夢・5
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「じゃあ武術会の時、師範を生き返らせたのは、サキ?」
蔵馬が驚いた様にサキに質問する。
「うん。正確に言えば、仮死状態にしてあった肉体を回復させて、それに魂を戻したんだけどね」
がこんっ☆
「早くやりな」
「……はい」
幻海がサキの頭にげんこつを落としながら言う。
(師範、痛いです(T_T))
サキは左手につけているアクアマリンのブレスレットに手をかざすと、魔導力を込めながら呪文を唱え始めた。
「主たるサキが命じる。すみやかにその姿を表し、我の力の助けとなれ!」
すると、ブレスレットの宝石が少し光を放ち、ブレスレットはまたたく間に美しいアクアマリンの刃のついたヤリへと姿を変えた。
サキは海藤の肉体の上にヤリをかざすと、力を込め始めた。
(ふぅ……)
サキが静かに深呼吸をすると、徐々に魔導力が高まり、海藤の肉体と魂を包み込んで行く。
しかし、まるで水面に水の波紋が浮かんでいるかの様にサキの力は微妙に安定しない。
「相変わらず下手クソだねぇ」
幻海はそう言いながらサキのヤリの上に軽く手をかざす。
すると一点の曇りもない湖の様にサキの力が安定した。
「いいかい? この状態のまま、肉体に魂を戻すんだよ?」
「はい」
簡単にやっている様に見えるが、サキの体から放出されている力を見れば、それが容易でない事が一目で分かる。
その証拠にヤリを持っているサキの手は小刻みに震えていた。