『恋樹』


□19・訪問者
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「あの・・そろそろ私、帰ります」


四人で会話をしていたら5時を少し過ぎてしまった。



もうさすがに外が暗い。




「なら如月さん、送ってくで」
「ううん!大丈夫だよ?
それに・・ほら外、暗いし寒いから・・・」
「なおさら送ってく」
「本当に大丈夫だよ?」
「如月さんは大丈夫でも俺が心配なんやって。
暗いトコ・・女の子一人やと危ないし、一人より二人の方が暖かいやん?」
「でも・・・」
「夕歌ちゃん、クーちゃんに甘えたらええよ。
あたしも夕歌ちゃん、一人で帰らすんは心配やし・・」
「あたしも友香里の意見に賛成」




友香里ちゃんとお姉さんがジッと私の方を見る。






一人で帰って心配させてしまうのは嫌だな・・・







甘えていいのかな・・・?








「ならお言葉に甘えて・・・」
「ん。ほんなら行こうか?」
「うん」







そういってリビングを出た途端、ある事を思い出す。












見たい・・・










けど・・・











いきなり失礼じゃないかな??












でも折角来たのに・・・














見たい











行きたい























「どないしたん?悩んだ顔しとるけど」




考え事をしていたら白石君に話しかけられた。






言うなら・・・今しかないよね??






「あのね白石君、時間が遅いから・・・少しでいいんだけど・・・
行きたい場所があるの」
「何処に行きたいん?」
「・・・白石君の部屋」








白石君の部屋に行きたい。









でも・・・いきなりなんて悪いかな?






「だめだったら別にいいよ?
そのいきなりだから・・・」
「別にええよ」
「えっ?」
「俺やってイキナリやったのに
如月さんの部屋に入れてもらったし・・・
それなのに自分の部屋見せないとか・・・
悪いやろ?」






そう白石君は笑って言って・・・







「おいで」





そう優しく言って・・・




2階の・・・自分の部屋まで連れて行ってくれた。


















入った白石君の部屋はシンプルなんだけど・・・
必要ってモノがすべて揃っていて無駄がない。


それと健康グッズがたくさんの種類が置いてある。




「なんか悔しいなぁ・・・」
「何が悔しいん?」
「だって私の部屋より綺麗に整理されてるから」




そう一言でいうと白石君の部屋は





男の子の部屋と思えないほど綺麗。




「如月さんの部屋だって綺麗やったで?」
「全然っ!すごい汚いよ?
白石君が来た日なんて前日に広げたテニスとかの資料が
机とか床に・・・すごい散らばってたもん」
「それはしゃーないやろ?
散らかるのは如月さんが
マネージャーとして一生懸命頑張っとる証やで」
「白石君・・・優しいね」
「俺が?」
「うん。
だって散らかってるのが頑張ってる証っていうの白石君くらいだよ?」
「もっとオカン的なこと、言ってほしかったんか?」
「ううん、嬉しかったよ。
ありがとう」
「ん。どういたしまして」
「あと・・・今日は白石君の家に行く事ができて嬉しかった。
友香里ちゃんとお姉さんとお話たくさん出来たし、
それに・・・普段見れない白石君も見れたし」
「如月さんから見た家での俺って・・どんな感じなん?」
「う〜ん・・・可愛いかな?」
「なんで?」
「普段、部長さんでしっかり者の白石君が、
お姉さんと妹さんにいじられてて・・・可愛いなって」
「可愛い・・って男としてはショックやな」
「ごめんなさい・・・」
「ええよ?
悪い意味で言ったんやないって分かっとるから」








そういって白石君は優しく微笑んでくれた。









「姉妹がいるのって・・・羨ましいな」








うん・・・羨ましい。






一人っ子の私にとって・・・




近い年齢で・・・笑いあったり、泣きあったり、ケンカしあったりする家族なんていないから。






「私のお母さん、体弱かったのに・・・
お医者さんに危険だって言われてたのに
私を・・・生んでくれたの」
「如月さんのお母さん・・・強いんやな」
「うん・・・お母さんは私なんかより・・・ずっとずっと強い心を持ってる。
でもね・・一人っ子ってやっぱり寂しくて・・
お母さんに姉妹が欲しいって小さい頃・・・頼んだ事があるの」
「うん・・・」
「お母さんは笑ってたけど、お父さんはそれを聞いて悲しそうな顔してた。
私の願いを叶えたら・・・引き換えにお母さんが死んじゃうって・・・思ったから」
「うん・・・」
「だからね・・・もう姉妹は望まないって決めてたのに・・・
白石君の家に来たら・・やっぱりいたらいいなぁって・・・望んじゃった」









やっぱり欲しかった。







一人じゃないっていう証が欲しかった。







家に帰っても・・・








体の弱いお母さんは病院にいて・・・






編集長で忙しいお父さんは仕事から帰ってくるのが遅くて・・・












一人で夜を過ごした。












そんな日が多かったから・・・











一人じゃないって証が欲しかったの・・














「如月さん、いつでも家来てええよ」




白石君が・・・また優しい笑顔で言う。




「姉妹が恋しかったら、いつでも来ればええ。
もうひとつの・・・家だと思ってええから」
「いいの・・・?」
「たまには甘えてええんやで?
如月さん、まわりに気配り過ぎ。
お願い事も・・・もっといっぱい言ってええから」
「でも・・・そんなに言ったら、わがままになっちゃうよ・・・」
「わがままになってええから。
俺が全部・・・叶えたる」
「白石君・・・優しすぎるよ」
「如月さんには特別優しいんやで?」




そんなに優しさを貰っていいのかな・・・




って思いつつも嬉しくて








私は自然に笑顔になってて・・・












白石君の隣は・・・











特別温かいってことに気がついた。


























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