『恋樹』
□02・出会い
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(うわぁ〜大きい!立派!)
途中で道に迷いながらも無事着いた四天宝寺中学校。
そこは私が予想していた以上に大きくて・・立派で驚いてしまった。
大きな校門はまるでお寺の入り口みたいで立派で、職員室に向かうまでの窓の外の景色も新鮮。
噴水もあって、食堂らしき大きな建物もあって・・・まるで私立なんじゃないかって思うくらい府立にしては大きかった。
そんな学校だけに・・・頭に『こんなに立派な学校で・・私上手くやっていけるかな?』なんて不安が過ぎる。
友達1人も出来なかったらどうしようとか、
イジメにあっちゃったらどうしようとか、
『東京モン』って馬鹿にされちゃったらどうしようとか、
・・・私、不安になり過ぎ・・だよね・・・
不安になって・・脈を早く打つ心を落ち着かせようと大きく深呼吸して、職員室のドアを開けた。
「・・・失礼します」
「あぁ!いらっしゃい!え〜と・・・如月さんやったっけ?」
「は、はい!東京から転校してきました如月 夕歌と申します」
「俺は如月さんが転入するクラス担任の古谷いいます。
教えとる科目は英語やから、英語でなにか分からないことあったら聞いてな?もちろん勉強以外でも質問しにきてええで」
「はい、わかりました」
古谷先生は教師暦3年のまだ若い先生で、優しそうな先生で良かったって少しホッとする。
「ホンマはこの後、学校の中でも案内しようか思ってたんやけど、急に職員会議入ってもうてな。
悪いんやけど1人で学校探索してもらってもええかな?」
「はい、構わないです」
「ほんならコレ、学校敷地内の地図な?
今日部活動やってるトコもあるから見ていくとええわ、部活選びの参考として。
四天宝寺の生徒は基本、運動部と文化部の両方に必ず入るんや。
如月さんはお母さんのことがあるから・・強制とは言わんけど、四天の部活はどこも楽しいから1つでも入ってみたらええで」
「はい、考えておきます」
「なら来週からよろしく頼むわ」
「はい、来週から・・迷惑をかけることもたくさんあると思いますが、よろしくお願いします」
そう言って先生に礼をして、職員室から出る。
しばらく廊下を歩いていると緊張が解けたせいもあって思わず溜息がでた。
勢いで部活のことについて『考えておきます』って言ってしまったけど・・本当は入る気も考える気もあまりなかった。
東京の学校にいた時も、なるべくお母さんの傍にいようって決めてどこの部活にも入らなかったから。
大阪でもそうしようってずっと前から決めてた。
それに・・・私が大阪にいれるのは限られた時間しかないから。
(とりあえず色々な教室を見て回ろうかな・・・)
そう思って階段を上がっていくとバタバタと廊下を走る音が聞えた。
(生徒さんかな・・・?)
「謙也さんのアホ。謙也さんのせいで部活確実に遅刻やわ」
「しゃーないやろ!!侑士と夜まで遅くまで話し込んでて寝れなかったんやから」
「またですか?ええ加減、電話代とか気にしたらどうですか?」
「そういえば電話代とか気にしたことないわ・・・」
「これだからお坊ちゃんは嫌やわ」
「ってアカン!!部活開始まであと1分もないわ!!財前急ぐでっ!」
「ちょっ・・・謙也さん。廊下走ったら怒られますわ」
「浪速のスピードスターは走らなアカンちゅう話や!」
「・・・馬鹿やわ・・あの人」