short story


□星に願う5秒前。
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星に願うなんて馬鹿げたことやと思ってた。




どーせ星に願ったって・・・叶うわけあらへんんし。




そんな冷めた考えしとった。













────あの夏の日の・・・君を見るまでは
















―――――【星に願う五秒前。】



















時は7月。



夏休み入って・・・まだ間もない頃。




特に変わった事もなく、いつも通りの練習、いつも通りの帰り道になるはずやった。








「今日、皆で星でも見にいかへん?」







どっかのスピード馬鹿がそんなこと言うまでは。













『星を見る』という言葉に先輩らの目が輝く。








「おっ!天体観測か?謙也もたまにはええこと言うやん」
「たまにはは余計やっ!!白石っ」
「ばってん・・・なんでいきなり天体観測したいと思ったと?」
「なんか今日、ニュースでなんとか流星群が見れる言うとったから・・・よく晴れとるし皆で見たいな思うてな」
「なぁーなぁーしらいしぃ〜!りゅーせーぐんって美味いんかっ?!!」
「・・・金ちゃん、星は食えへんで;;」
「でもええなぁ〜流れ星なんて。ロマンチックやわぁ〜」
「せやな小春!2人で流れ星に願い事し……「黙れや、一氏」
「・・・・・(泣)」
「ほな、今日は天体観測といこか?」
「わーいっ!お星さん、いっぱい採るで〜〜っっっ!!」
「金ちゃん、潮干狩りじゃなかとよ」






・・・そんな会話を俺は冷めた心で聞いとった。


星ひとつ見に行くゆうだけで、なんでそこまで騒げるのか俺には訳わからん。




流れ星に願ったってなんにも叶えてくれないやん。




それより流れ星が見えなくなる前に、願い事を3回唱えるっちゅうほうが無理やろ?

どんだけ願い事早く言わなアカンのや。

謙也さんなら出来るかも知れへんけど・・・




とにかく・・・一言で言えば天体観測なんて面倒で



俺は先輩らにバレへんように部室を後にした。















─────
───────
─────────






部室を出ると7時近いゆうのに明るい空が広がってた。



(・・・・暇やな)



いつも通り・・・先輩らとたこ焼きでも食うて帰ると思っとったから。


でも思いがけない・・・天体観測という提案で妙に時間が空いてしまった。




まっすぐ・・・家に帰りたいとも思わへん。

1人で・・・ぜんざい食いに行きたいとも思わへん。



(・・・CDショップでも寄って帰ろうかな)







──そう思って歩きだそうとした瞬間やった。











「財前君」









後ろから・・・・マネージャーに呼び止められた。











「・・・・水無月先輩」
「どうしたの財前君?帰っちゃうの?」
「俺の様子見れば分かるんとちゃいます?」
「・・・なんか用事でもある?みんなで天体観測行かないかって謙也が・・・」
「あらへんわ。・・・ただ天体観測なんて面倒やなと思うて。流れ星に願ったところで必ず叶うわけやあらへんし」
「財前君、流れ星に願ったことあるの?」
「ないですわ」
「なら・・・願うかどうかはやってみなきゃ分からないよ!それに天体観測は星に願うだけじゃないよ?」









『やってみなきゃ分からない』






そんなありきたりの綺麗語に・・・なぜか心が吸い寄せられた。




・・・・・・なんでやろ?






「星座とか見つけたり・・・神話について星を見ながら考えたり・・・自分で新しい星座つくったり・・・楽しいこと、たくさんあるよ?」
「・・・・・・・せやけど」
「ねぇ・・・財前君、今・・・何月か知ってる?」
「7月やけど・・・どうかしたんですか?」
「・・もうすぐ全国大会でしょ?全国大会が終わったら・・・部長も謙也も師範もユウジも小春ちゃんも副部長も・・・私も・・・引退なんだよ?」
「・・・・・・・」
「だから・・・一瞬一瞬を大切にしたい」
「水無月先輩・・・・」
「・・・ほらっ!そうとなったら財前君、天体観測行こうっ!!みんな待ってるよ!」
「ちょっ・・・先輩・・・・」






そういって先輩は俺の手を引っ張って部室に連れ戻した。






掴まれた部分が妙に熱くて・・・・



冷めてばかりやった心になにか温かいモンが流れこんできた気がした。





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