『恋樹』


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「白石も、もう少しで3年生になるんやなぁ」
「なんや、オサムちゃん・・・イキナり」





今日は冬休み最終日。




新年で皆、遊びたいトコやろうけど部活あり。


部長の俺は練習のことで、オサムちゃんに呼ばれて職員室に来とった。





「いや〜・・時が経つのって早い思ってなぁ。
あんなに小さかったのに、こんなに大きくなりよって」
「なにオトンみたいな事、言ってるん?
寒気がするわ」
「それより白石」
「なんや・・・オサムちゃん、どないしたん?」
「如月とは、どこまで進んどるんや?」
「はぁ?なんでオサムちゃん・・・」





そないな事・・・聞くんや?





財前と小春くらいしか気づいてないと思ってた。






俺が・・・恋してるなんて。






「そんなん見て分かるやろ?
お前らより恋愛経験豊富な男やもん。。
ただのおっさんで、顧問で、先生やと思ってたら大間違いや!」
「・・・見てわかるんやったら、状況くらい俺に聞かんでもええやろ?」
「そりゃ分かるで?
まず如月は天然で気づか・・・」
「ほんなら練習戻るわ」
「ちょっ、白石??」



俺を引き止めようするオサムちゃんを無視して・・・
職員室をあとにした。












聞きたくない。










自分が一番・・知っとる現在状況を・・・





他の人の口から聞きたくないんや。














本当は気持ち伝えて・・・現在状況から抜け出したい。











今すぐ捕まえて俺のモノにしたい。















やけど・・・











俺の気持ちを相手が気づくまで、それは出来ないって決めてた。





名前で呼ばないって決めてた。







如月さんが・・・
俺に話したい事の答えが出るまで・・・





『ずっと待っとる』って言った。














笑顔を見るだけで幸せで






声を聞くだけで幸せで






一緒にいるだけでも幸せで














たくさん我慢してても・・・幸せな事、いっぱいあるんやけど・・・












望んでしまう。


















「恋ってこんな辛いモンやったけ・・・?」














小さく呟いたハズやったのに・・・



誰もいない廊下では、その言葉はとても大きく響いた。















「せや・・ジャージの下、教室に置きっぱなしやった」




沈んでいた気持ちを戻すために違う事を慌てて考える。






なんや・・・俺・・・情けないわ。








そう思いながら階段を昇って教室へ向かった。


明日から騒がしくなるであろう廊下を歩いて自分の教室のドアの前に立つ。






そこまで・・・誰もいないと思ってたんやけど
突然、ドアの奥から音が聞えて教室に誰か居るんやって認識した。



冬休みなのに・・・誰や?



謙也とか?








ドアを開ければ、立っていたのは女の人やった。








誰やろ・・・?





制服着てないし・・・誰かの姉やろうか?






そんな事考えとったら、俺に気づいたみたいで驚いた顔して女の人が振り向く。


そして慌てた顔をした。




「あっ、ごめんなさい・・・。
勝手に入っちゃいけなかったわよね?」
「いえ・・・別にええですけど、こんな所で何してるんですか?」





冬休みやのに・・・来校者。





妹か弟の忘れ物でも取りに来たんやろうか?

いや・・・忘れ物やったら普通、本人が行くやろ。





「事情があって・・・今まで娘が通ってる学校とか・・・姿とか見たことなかったから、
今日がチャンスかな・・・って思ってきたの」





へぇ〜・・・娘さんを見に来たってわけか。










ん?







娘?








弟や妹やのうて?


つまり・・・オカンってことやろ・・・?





「えっ?!オカン・・・?!」
「えっ?あの・・・」
「いや・・・あの若いし・・綺麗やったから、誰かの姉さんやと思ってたんです」
「ふふ・・・いいのよ、気にしないで?
私、童顔だから良く言われるの」
「はぁ・・・。で、娘さんは?」
「えーと・・・部活のはずなんだけど・・・
校庭に行く前に学校の中を見てまわってたら、
いざ校庭に行こうと思った時に道に迷って・・・」






ただ1階に降りるだけやのに・・・



迷う人は迷うんやろうな・・・







「案内しますよ。
俺も丁度、部活で校庭に行こう思ってたんです」
「いいの?迷惑じゃないかな??」
「ええですから・・・」



娘さんが何部か分からんけど、
校庭やから運動部や。


今日活動してる部で女子部員がいるのは、
バレー部とバスケ部。

バスケ部は体育館練習してるはずやから、可能性は消えて・・

バレー部は校庭で走りこみしとるから、大きな確立でこっちやな。



そこまでの案内やったら簡単やし・・・テニスコートも近いし、
案内しつつも、自分も目的地へ着ける。




「それじゃ・・・お言葉に甘えて。案内してください」









そういって笑う顔が・・・







誰かに似ていた。
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