『恋樹』


□19・訪問者
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午前の部活が終わり・・・




私は今・・表札に『白石』と書かれた家の前にいる。




私のお願い通り・・・





答えを見つけるのに待たせる代わりに
白石君の家に行く事になってしまった。






行きたいって言ったのは私なんだけど・・・







すごい緊張してしまって、
もう白石君の家に着いてから5分くらい経つというのに・・・

足が一歩も動いてくれない・・・





「如月さん!」




家のドアの前でさっきから白石君が呼んでるんだけど・・・



私は門の前で止まったまま。



とうとう心配にさせてしまって・・・
白石君が私のいる門の前まで戻ってきてくれた。


「如月さん、大丈夫?」
「う、うん・・・でも友達の家に入るのって初めてで・・・その・・・」





そう。




男の子の家に行くとかどうかじゃなくて。





友達の家に行く事自体が初経験。





「え?友達の家、行ったことあらへんの?」
「うん・・・誘われても・・・断ってて・・・。
そのお母さんと少しでも長くいたかったから。
いつも見てないと・・心配だったから」
「そうなんや・・・」





そういった瞬間、白石君が私の耳元にそっと呟いた。




「俺も家に女の子連れてくるの・・・初めてなんや」
「えっっ?!!」
「ほな、行くで!」




えっ?






一度もない?






初めて?








彼女の部屋にも入ったことなくて・・・



自分の家にも呼んだことないの?







初めてが私でいいの?






そんなこと考えている間にも、
白石君に手を掴まれて・・手を引かれて・・

ドアの前に立っていて・・・


白石君がドアを開いた。















「ただいま」






白石君がそういうと、2階のほうで大きな音がして階段から女の子が降りてきた。



2つ結びの・・・可愛らしい女の子。




「クーちゃん、お帰りなさいっ!
その子が彼女さん?!
めっちゃ可愛えやんっ!!」
「彼女やのうて、マネージャーでクラスメイトで友達」
「は、初めまして!如月 夕歌です。
白石君にはお世話になってます。。」
「そんな固苦しいこと言わんでええよ?
ウチ、クーちゃんの親やないんやし。
ウチは妹の白石 友香里いいます!
夕歌ちゃん、よろしくな??」
「うん、友香里ちゃん、よろしくね?」
「ほな!夕歌ちゃん、早よあがって?
話したいこと一杯あるんや!
もう!クーちゃんがなかなか連れてこへんから・・・」
「あのな・・・友香里。こっちにも事情ちゅうもんが・・・」
「カブトムシの話は聞き飽きたわ」
「いや、俺話そうとしてへんやけど」
「お、おじゃまします。。」





今度は友香里ちゃんに手を掴まれ・・手を引かれながら部屋に入る。






「そこ座って?今、お茶いれるから」
「手伝うよ??」
「ダメっ!夕歌ちゃんはお客さんなんやから!」
「せやで、友香里の言う通りや。
夕歌さんはゆっくりしとき?」
「うん・・・ありがとう」



人のお家って初めてだから・・・


どうしたらいいか分からない。。




「ねぇ・・・白石君」
「ん?どないしたん?」
「人の家に行ったら・・・何したらいいのかな?」
「う〜ん・・・特にないんやけど・・・そや、あれやなっ」
「・・・あれ?」
「家に来たときよりも、笑顔で帰ってくれたらええ。
それだけや」
「笑顔で?」
「泣いて帰られたら・・・悲しいやろ?」
「うん」
「だから・・笑顔で帰ってくれたら、それでええ。
せやから気使わんといてええからな?」
「うん・・・」



言葉ひとつ、ひとつに白石君の優しさがあって・・・

自然と心が暖かくなる。







しばらく白石君と友香里ちゃんと話しているとあることに気がついた。





「そういえば白石君、お姉さんは?」




思えば肝心のお姉さんがいない・・・

制服のお礼が言いたかったんだけど・・・
用事が出来ちゃったのかな?





「あぁ、もうすぐ帰ってくると思うんやけど・・・」





そう白石君が言った途端、玄関の方からドアの開く音が聞えた。


次にリビングのドアが開いて綺麗な女の人が入ってきた。


「きゃーー!貴方が夕歌ちゃん?!」
「わっ!!」
「姉ちゃん、いきなり抱きついたら如月さん、ビックリするやろ?」
「こんなに可愛ええ子いたら、誰だって抱きつきたくなるに決まっとるやん。
あぁ!もしかして・・・蔵ノ介、嫉妬しとるん??」
「・・・別にしとらん」
「クーちゃん、嘘ついちゃって・・・大人げないなぁ」
「あ、あの・・・初めまして、如月 夕歌です。
あの・・・制服、ありがとうございます・・!
その・・本当に大切に使わせてもらいます」
「そんなお礼なんて言わなくてええよ?
ずっと取っておくのもあれやったし・・・
使ってくれたほうがええわ」







お姉さんがニコって・・・笑った顔が




やっぱり姉弟だけあって、
白石君に似ていた。










お姉さんも加わってお茶を飲みながら、
四人で会話する。



「夕歌ちゃん、東京から来たばっかなんやろ?大阪どう?」
「えーと・・・最初は道に迷ったりとか・・・
東京と違うテンションとかについていけなかったんですけど、
今は大分なれました」
「四天宝寺は?」
「東京の学校と授業とか全然違って、
楽しい学校だなぁ・・って思います」
「マネージャーの仕事はどうなん?」
「部員の人たちが優しくて・・・手伝ってくれたりして・・・
大変ですけどやりがいがある仕事です」
「どうしてマネージャーになったん?」
「最初・・・謙也君に誘われて・・その後、白石君にも誘われて・・・」
「蔵ノ介、優しい?」
「はい。優しいですよ」
「蔵ノ介とはどこまで進んだ?」





・・・進んだ??





「へっ?あの・・・」
「ちょっ、俺と如月さん、そういう関係やないから!」
「えっ?そうなん?ビックリだわ・・・。
てっきりそういう関係やと・・・」





そ・・・そういう関係??



何だろう?




「あの・・・そういう関係って??」
「へぇ〜夕歌ちゃんって天然なんや。。
可愛ええけど・・・蔵ノ介にとっては大変な壁やね?」



天然?壁??



白石君とお姉さんの会話についていけない。



「2人して変な質問するから
如月さん、めっちゃ困っとるやん」
「ごめんなぁ、夕歌ちゃん。
今の質問は忘れてええから」






とはいっても・・・



もう手遅れかもしれない・・・





すごい印象に残ってしまってる。
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