『恋樹』


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誰にも言えない・・・。








一瞬だけ・・・






ほんの一瞬だけ・・・






財前君が後輩じゃなくて、男として見てしまった事。








でもそれ以上に言えない事がある。








白石君を何回も部長とか友達とかじゃなくて、


男として・・・異性として見ていた事に。





今日、私は初めて気づいた。







その事を言いたくなくて
隣に座る白石君に









私は小さな嘘をついた。







今・・・私・・・頭の中、真っ白だ。





どうして、そんな風に見えてしまうのか分からないのに・・・



気持ちの整理がつかないのに・・・




白石君が私の隣にいる。


しかもまわりに人がいない・・・。



さっきから私は白石君の顔を見られないでいる。






この場から逃げ出したい。







私が席を立とうとした時だった。






「如月さん」





白石君に話かけられた。





「どうしたの・・・白石君?」




胸のざわめきを抑えて返事をする。


そして・・・


勇気をだして、白石君を見た。




白石君は優しく笑ってて・・・でも何処か悲しそうな顔。



そして告げられた言葉。









「如月さん、嘘ついたらアカンで?」









あぁ・・・





やっぱり・・・








白石君は分かるんだ・・・








どんな嘘をついても・・・







上手くつけたと思っていても・・・







白石君には分かるんだ・・・










「どうして分かるの・・・?」
「前にも言うたで?
 如月さん、顔に出やすいって」
「本当にそれだけ?」
「それだけやで?」
「私は白石君がなにを考えてるのか分からないのに・・・
ズルイよ・・・そんなの・・・」





私だけ気持ちを読まれて・・・



私は気持ちを読み取れない。






私だって白石君の気持ち知りたいのに。





そんなの・・・ズルイよ・・







「それホンマ?」
「・・・?」
「ホンマに如月さん、俺の思ってる事わからへんの?」
「え・・・?」
「なら今から確かめてみようか」
「??」
「俺が今、考え取ること当ててみ?」
「む、無理だよっっ」
「さっきの会話、思い出したら分かるんとちゃうかな」
「さっきの会話・・・?」




財前君と話したあと・・・白石君が来て



白石君が







『財前と・・・何話したん?』








って・・・あれ・・・?









『如月さん、嘘ついたらアカンで?』









もしかして・・・






「財前君と私の会話の内容が気になってる・・・?」
「ピンポーン!正解や」



うぅ・・・やっぱり・・




でも・・・


白石君が気になっていても・・・





話したくない・・






そんな不安な気持ちでいたら、白石君が私の前髪を指で撫でた。




「自分、話したくないんやろ?」



そう言いながら・・・





私は黙って頷く。




「だったら話さなくてええよ?
如月さん、無理とか言いながら俺の気持ち当てたし・・」
「でも・・・・」
「あっ、話さない代わりにお願いはきいてもらうで?」
「えっ?お願い・・・?」
「ん。お願い」
「お願いってなに??」
「俺の家、来へん?」
「えっ!!」



白石君の家に??




思わず大きな声をあげてしまった。。





「ほら、如月さん、この前ウチの姉貴に制服のお礼言いたい言うてたやろ?」
「うん・・・」
「姉貴も妹も・・・如月さんに会いたい言い出してな・・・。
連れて来いって言われてんのや」
「そ、そうなんだ」
「それに・・・」
「?それに??」
「如月さんの部屋、入ってもうたし・・・
それで自分の家には呼ばないなんて失礼やろ?」
「別に気にしてないよ?」
「人の部屋に入るって・・・結構、緊張するんやで・・・??」
「そうなの?だって白石君、謙也君のお家によく行ってるのに・・・」
「謙也は男やろ?如月さんは男ちゃうで?
俺・・・女の子の部屋入るの姉貴とか妹の部屋以外で初めてやったし・・・」
「えっ!そうなの?
だって白石君、彼女とかいたんじゃ・・・」
「俺に彼女がおったって誰から聞いたん?」
「け、謙也君がカラオケの時に」
「はぁ・・・確かにおったけど・・・名前だけの関係やった」
「名前だけ?」
「名前だけで・・・愛なんてなかった」






彼女と彼氏なのに・・・愛がない?






どういう意味?






つまり好きじゃなかったってこと??








「で?如月さん、どっち選ぶ?」




白石君に話しかけられて思考が止まる。






そうだ・・今は選ばなきゃいけないんだ。











でも・・・もう答えは決まってる。










「白石君・・・私からもお願い言っていい?」
「なんや?」



白石君が笑顔で答える。






「財前君との会話で気づいた事があるの」





この前・・・皆から教わった。




隠し事のない関係が・・・




素直に話してくれる関係が・・・



そんな関係が嬉しいって。








白石君も私に素直に話してくれる。






だから嘘はもうつきたくない。





隠し事はしたくない。







けど・・・・






「話すけど・・・答えが出てないことがあるの」






そう。








友達以上の関係が何か?





白石君を異性として見てしまうのが・・なんでか?








「だから・・・その答えが出るまで待っててくれる?
待たせるかわりに・・・白石君の家に行かせて?ううん・・・行きたいの」







話すといって・・・待たせて、




また家に行きたい・・・っていうわがままな私のお願い。






こんなお願いするの初めてかもしれない。





お母さんとお父さんに苦労をかけないようにって・・・




自分の気持ちに素直でいなかったから・・












「ええよ。
ずっと待っとる、家にも行かせたる」
「本当・・・?」
「嘘はつかんで?」
「うん・・・」
「ずっと・・・如月さんが答えを見つけるの待っとるから」














そういう白石君は本当に優しい瞳で・・・








早く伝えたいって思った。












『友達以上の関係がなにか分かったよ』











そう笑顔で。














きっとその言葉を言える日は・・・そう遠くない。

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