『恋樹』


□17・
1ページ/2ページ

携帯電話につけた青いストラップを揺らして眺めていた。
























青い・・・小さな星がキラキラと揺れる。




























昨日、久しぶりに『あの樹』へ行ったら
青いリボンと一緒に青い小さな・・・ラッピングされた袋があった。



いつか『いつものお礼に』ってクッキーを贈ったあの日から返事がこなくて・・・











・・・すごく寂しかった。










だから返事がきたことに嬉しさを感じる。






リボンには


『クッキー美味しかったで。
これ・・・お返しに貰ってな?』


・・・って書いてあって、

袋の中には今、携帯電話につけているストラップが入ってた。










こんなに高そうなの貰っていいのかな・・・?










・・・って思いつつも嬉しくて








そんな気持ちをいつものようにオレンジのペンで紙に書いて結びつけた。


































「お母さん、元気にしてた?」





今日は練習が午後からというので、
昨日渡せなかったお母さんへのクリスマスプレゼントを持ってお見舞いに来た。







お母さん・・・元気そう。






よかった・・・・・。








「ごめんね・・・忙しくて・・・なかなかお見舞いに行けなくて」
「いいのよ。
夕歌が部活のマネージャーとして頑張ってるんだろうなって思うと、お母さんも頑張らなくちゃって思うの」
「そっか・・・」




励みになってるなら嬉しい。




「ねぇ、それより夕歌・・・その制服」
「うん。四天宝寺の制服!部の皆がプレゼントしてくれたんだよ?!」
「そうなの?よく似合ってるわ!
夕歌もすっかり大阪に慣れたわね」
「うん!あとね・・・白石君からテニス部のジャージを貰ったの」
「白石君って部長さんだっけ?」
「うん、この制服も正確にいうと白石君のお姉さんのものなんだ・・・」
「あら、ちゃんとお礼言った?」
「言ったよ?
あっ、でも白石君のお姉さんには直接は言えてないけど・・・」
「ふふっ、私も娘がお世話になってますってお礼しないといけないわね」
「うん・・・だから早く元気になってね?」







お母さんはニコっと笑ったけど・・・










知ってるんだよね?





…元気になる可能性は…とても低いってこと。
















この不安だけは消えない。




















…これからも消えない。





































部活に行くと誰もいない教室で、すばやくジャージに着替えた。







昨日貰った白石君のジャージに腕を通す。






やっぱり…ピッタリだ。





1年生の頃の白石君は私と変わらない身長だったんだと思うと不思議で





今はあんなに身長が違うんだと思うと・・




1年ってすごい長い時のように感じた。









テニスボールをカゴいっぱいにして運んでいたら、前に謙也君が見えた。








隣にいるのは…財前君かな?







昨日の白石君の質問…思い出しちゃった…













『財前を男として見たことはあるんか?』










ううん…








財前君は…仲間であり、友達だよ?














優しい…後輩だよ?














「おっ、夕歌やっ!」
「こんにちは、謙也君。今日も元気だね?」
「こんにちは、如月先輩」
「こ、こんにちは…財前君…」
「そのジャージ…」
「ん?」
「如月先輩…そのジャージ、どうしたんですか?」
「えーとっ、これは…」

















白石君に…










皆には













このジャージは白石君がくれたっていうこと話しちゃダメだよ…
















って言われたんだっけ…?













特に…財前君にはって。














「このジャージ、オサムちゃんから貰ったの」
















私は…
















小さな嘘をついた。




















「オサムちゃん、めっちゃ優しいやん!!
すっかり夕歌も四天宝寺の一員やな」
「…うん」
「へぇ…オサムちゃんが」







謙也君は信じてくれたみたいだけど、





財前君は…やっぱり・・








少し疑ってるように感じる。









「それじゃあ、今日も2人とも練習頑張ってねっ!!」
「夕歌もマネージャーの仕事、頑張ってな?」
「うん」



そういって謙也君と財前君の傍を離れる。




・・・今日は財前君には近づかないようにしておこう・・・。













皆がランニングしてる横で・・レギュラー達は試合をやってる。

私はストップウォッチを持ちながら、走ってる部員に時間を伝えながらも・・・









白石君を見てた。











やっぱり綺麗なフォームで・・・






完璧なテニス。






すごい・・・・。
























「財前っ!大丈夫かっっ?!!」








突然、謙也君が大きな声を出したので驚いて駆け寄る。


傍に行ってみると、財前君のラケットが折れてしまったみたいで

その折れた・・・鋭く尖った部分が財前君の足にあたって大きな傷を負わせていた。





「財前君っ、大丈夫?」
「平気っ・・・」




返事しようとしたら、大きな痛みが走ったのか財前君の顔が歪む。







傷跡・・・結構深い・・・。







保健室で手当てした方がいいかも。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ