『恋樹』


□15・甘いぜんざい
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白石君と財前君が飲み物を取りに行く時・・・








白石君が私に向かって・・・何て呟いたのか気になって仕方ない。






少し微笑みながら・・・呟く白石君。




・・・でも、その呟きはあまりにも小さな声で聞き取れなかった。




ドアの近くにいた謙也君も聞えなかったって言ってたし・・・





あの時、白石君のすぐ傍にいた財前君なら



聞えてたのかな・・・?


知ってるのかな・・・?





・・・白石君が呟いた言葉。







「夕歌、なんか悩んどるんか?」
「そういう謙也君も・・・私には悩んでるように見えるけど・・・?」
「やって白石が最近、恋バナしてくれへんのやっ!!」


確かに・・・シャンプーの香りがする子が好みって言うだけで終わっていた。


謙也君がその答えで納得するわけない。




「最近・・・ってことは、前は話してくれたの?」
「話してくれたで?まぁ・・・白石が相談してくる時もあったんやけどな」
「白石君が相談・・・?白石君、好きな人・・・いたの?」
「やのうて、白石が告白されて困っとる〜どないしたらええんやろ?・・・みたいな感じで相談してきたんや」
「へぇ〜・・・謙也君は何て答えたの?」
「ん?確か・・・中1の時やから・・・付き合ったらええんちゃう?って答えた」
「そ、そうなんだ・・・」




ちょっと謙也君の言葉を聞いて・・・その先を聞いた方が良いのかな?って戸惑った。










なんでだろう?










白石君が付き合ってた・・・なんて聞いたら胸が痛いかも・・・。





今は付き合っていないとしたって・・・やっぱり・・・痛む。








なんだろう?この気持ち・・・。







聞こうか・・・聞かないか迷ってると白石君と財前君が皆の文の飲み物を持って返ってきた。









「遅かったなぁ?飲み物取ってくるなんて5秒で終わるでっ?!」
「あぁ・・・ちょっとドリンクバーが混んでてな。遅れてしもうたわ」
「はい、謙也さん・・・ドリンク」
「おおきに・・・って・・・えっ?何やっ?!!この薄気味悪い色はっ!めっちゃマズそうやんっ!!」
「それコーラとオレンジジュース、コーヒーと、コーヒーにいれるミルクを3つくらい入れたヤツですわ」
「なっ、飲みモンは大切にせなアカンで!」
「題して・・・」
「ちょ!財前、俺の話を聞けいうとるやん!無視せんといて!」
「Noスピード スローライフ☆ドリンク」
「題さなくてええわっっ!!
それにスローライフは呪いの言葉やでっ!!禁句やっていつも言うとるやんっっ!!
あと真ん中の星、いらんちゅう話やっっ!!」
「・・・ツッコミ・・・長過ぎるんとちゃいます?」
「誰のせいやっ、ドアホっ!!」





謙也君と財前君のやり取りを見ていたら、白石君がドリンクを差し出してきた。




「これ如月さんのな?」
「あ、ありがとう」




そういって渡されたのは、普通のお茶。




謙也君のドリンクみたいに変なのじゃなくてよかった・・・。




「なんや?ホッとした顔して・・・」
「えっ?そんな顔してた??」
「如月さんは気づいてへんけど、顔によぉ出てるで?」
「そ、そうなんだ・・・」
「心配せんでええよ?如月さんのドリンクには何も混ぜとらんから」
「顔で・・・そんな思ってる事まで分かるものなの・・・?」
「それは・・・俺やから分かるんやで?」
「白石君・・・だから?」
「あと・・・認めたくないけど財前も分かるんやないかな?」
「財前君か・・・、鋭いもんね!すぐ思ってる事言われちゃうから、ビックリする」
「せやな」
「・・・俺がどうかしたんですか?」
「わっ、財前君っっ!」





財前君がいつの間にか隣に座っていて驚いてしまう。





「そんなビックリせんでも・・・」
「ごめんね?そ、その・・・あまりにも突然だったから瞬間移動でもしたのかと・・・」
「それ・・・言い過ぎですわ、ホンマ如月先輩って部長しか目に入ってないんとちゃいます?」
「そんなことないよ?財前君もちゃんと見てるけど・・・」
「見てるんなら・・・もっとちゃんと見て下さい」
「・・・へっ?」





財前君がそう言ったと思ったら、顔が近づいてきて・・・



今にもぶつかっちゃいそうな・・・そんな位置で止まった。





「ちょっ、財前君・・・顔近いよっっ・・・」
「先輩の口元にクリームが付いてるから、取ろうとしただけやないですか」
「財前君!嘘はついちゃいけないよっ?!クリームのものなんて私、食べてないから!」
「まぁ・・・先輩にしては、ええツッコミですわ」
「・・・!!」






絶対っ!


この後輩、先輩の私を下だと思って遊んでるっ!





「財前、如月さんイジメるのやめようか?もし続けたら毒手が待っとるで?」
「部長・・・毒手は嘘って分かってますから、俺にはソレ、効かないっすわ」
「えっ?嘘なの・・・?」
「もしかして如月先輩、信じとったんですか?」
「だ、だって謙也君が・・・すごい真剣な顔して話すし・・・・毒手見せる時の白石君・・・なんか怖い顔してるし・・・」
「ええ子やな、如月さんは・・・。財前も見習ったほうがええで?純粋な子のほうが1年生らしいわ」
「元々こういう性格なんで・・・無理っすわ」
「せや!話変わるけど・・・如月さん、歌わへんの?」
「えっ?!だって時間が・・・」






今、謙也君と一氏君が歌っていて・・・

時計を見るともうすぐ6時。




カラオケはクリスマスパーティーが午前中に終わって2時から始めて・・・





もう4時間経つっていうのに・・・私は何も・・一曲も歌ってない。





「最後くらい・・・一曲くらい歌ったらええんちゃう?
せや!バレキス知っとるやろ?」
「う〜んと・・・バレンタイデー・キッスだよね?
2月になるとお店で良く流れるから・・・少しくらいなら」
「なら歌おうか?バックコーラスやりながら、フォローしたるから」
「えっ?!でもサビの部分しか分からないよっっ?!」
「今言うたやん・・・フォローしたるって。
俺の言葉・・・信じられへんの?」




私は声には出さずに・・・首を横に振った。




「俺も歌いますわ。俺は部長の言葉、信用できへんので」
「なんや財前・・・部長のこと信じられへんのか?」
「それにバックコーラスは基本2人のハズですわ」
「せやな」





二人が話し合う中、謙也君が私の肩を突いた。






「なぁ・・・夕歌、さっきから思っとるんやけど・・・」
「どうしたの?」
「白石と財前・・・なんか火花散らしてへん?あいつら何かあったんとちゃうかな?」
「そうなの?私には先輩と後輩が仲良く話してるようにしか見えないけど・・・」
「あれのどこが仲良くやねんっっ!!よぉ見てみ??」
「・・・仲良く話してるようにしか見えないよ?」
「はぁ・・・夕歌、眼科行ったほうがええわ・・・」
「えっ?そんなに悪いの??」
「夕歌ちゃんは別に悪くないわよ〜?女の子はぁ〜それくらい鈍感のほうがカワエエの!謙也、分かったかしらぁ〜??」
「全然分からんわ」
「もう〜そんなんだから恋愛できないのよ?」
「いや、俺は毎日スピードに恋してるっちゅうねん!」
「生き物に恋できないのぉ〜??」
「しとるで?」
「誰かしらぁ〜」
「イグアナ」
「・・・・アタシの聞き方が間違ってたわね」






謙也君の答えに小春ちゃんと私が唖然してると、突然白石君にマイクを渡された。






「えっ?!このマイク・・何?!!」
「あれ?忘れてもうたん?今から歌うんやで?」
「えっ!本気で言ってたの??」
「ほら、始まってるで?」



よく見れば財前君までマイクを握ってる。


それに耳に曲が流れ込んでくる・・・・。





これは・・・




歌うしか・・・ないよね??











私は恥ずかしながらも・・・バレキスを歌う事になってしまった。



なんか顔が変に真っ赤だよ・・・!!












「はぁぁ〜〜夕歌ちゃんの声、カワイイわぁ〜」
「俺の方が上手いっちゅうねん!!小春をもっとメロメロにでき・・・」
「黙れや!一氏っっ!!」
「小春ぅぅ〜〜(泣)」


・・・・・・・・・



「なぁ…銀」
「なんや?」
「確かに夕歌の声も聞えるんやけどな?」
「…どうかしたんか?」
「バックコーラスの2人…頑張り過ぎてんとちゃう?
おかげで夕歌の声が聞えにくいんやけど…銀、どお思う?」
「…同じく」
「はぁ…白石と財前、絶対何かあったわ」












私の初のカラオケで歌った曲は


『バレキス』という何だか…嬉しいのか恥ずかしいのか分からないもの。




でもバックコーラスの2人が一生懸命フォローしてくれて…嬉しかった。



2人で同時に話し出して…にらみ合うのは止めてほしいけど…。















…という事で長いクリスマスパーティーも終わり、謙也君たちと別れ





私は…









白石君と2人、イルミネーションで輝く道をゆっくりと歩いていた。



















「渡したいモンがあるんや」













…そう白石君に言われて。

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