『恋樹』
□02・出会い
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大阪に来ての・・・再会と新たな出会い。
慣れない土地で
慣れない生活で
慌てて戸惑い・・・不安でたまらなかった私を安心させてくれたのは
お母さんの優しい笑顔と
新しい友達の『ほな、またな』っていう『また今度会おう』っていう約束の言葉だった。
───【02・出会い】
大阪に来て早2日。
私は伯父さんにお母さんの入院している病院まで送ってもらった。
『314号室 如月』
部屋の入り口のプレートにそう書かれてることを確認して、軽くドアをノックする。
すると部屋の奥から優しくて・・温かいお母さんの声が聞えて、私はドアを開けた。
「お母さん、元気にしてた?」
「ええ、元気一杯よ。・・・ごめんね、お母さんなんかのために大阪に転校してまで来てくれて」
「気にしないで。傍にいるって・・だから大阪に行くって最終的に私が決めたことだから」
「ふふ、ありがとう夕歌。こんなに立派な・・・優しい娘がいて、お母さん幸せだわ」
そういって微笑むお母さんは綺麗だった。
お医者さんは・・・余命は残り僅かだって・・・そう言ってたけど、
・・・今のお母さんの姿を見るとそんな風には思えない。
いつもと変わらない笑顔で
いつもと変わらないピンク色に染まった綺麗な頬で
すごくすごく元気で
───・・・私の大好きなお母さんなのに
いつかは死んじゃうの・・・・・?
「夕歌?どうかしたの?」
「う、ううんっ!なんでもない。それよりね、お母さん。今日この後転校先に挨拶に行くの」
「転校先って確か・・・四天宝寺中学校だっけ?」
「うん。すごい名前の学校だよね」
「ふふ、そこの学校ね、お父さんの母校なのよ」
「えっ?!そうだったの・・・?」
「お友達たくさん出来るといいわね」
「む、無理だよ;;ほら私、人見知り激しいし、それにもし友達が出来ても・・・・」
・・・その先を言おうとして私は口を噤んだ。
『友達が出来ても・・・・・
──いつかは別れるから』
私の大阪への転校は永遠ってわけじゃない。
私が大阪にいれるのは
──・・・お母さんが生きてる間。
つまりお母さんが死んだら・・・私は東京に帰らないといけない。
それがお父さんと交わした約束だった。
だから・・・制服とか作ってなくて。
今になって・・・制服を作っておけば良かったなんて思う。
だって制服を作ってないなんて・・・まるで
長生きして欲しいなんて願っていても
心のどこか奥底でお母さんはもう残り僅かしか時が残されてないんだって・・・理解してるみたいで
嫌だった
永遠に来なければいいと思う・・・東京に帰る日なんて。
もし・・・帰るとしても
お母さんが元気になって・・・2人一緒に東京に帰れることを願う。
でもそんなの・・・───
私の頭の中で夢と現実が激しくぶつかり合った。
そんな中・・・お母さんが私に話しかける。
「ねぇ夕歌」
「なに・・・?お母さん」
「一緒にいて落ち着く・・・本音を言い合える、離れていても互いに想い合える、そんな友達をつくりなさい」
「・・・・・」
「夕歌なら大丈夫。きっと良い仲間にめぐり会えるから」
「・・・・うん」
「寂しかったり・・・悲しいことがあったら、いつでも会いに来ていいから、ね?」
「・・・うん」
「だから泣きたい時は泣いて・・・笑いたい時には笑ってね、約束」
そんな約束を交わして私は病院を後にした。
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