Chamber of Secrets

□39条
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1月の中頃にはわたしの耳や尻尾はきれいさっぱり無くなっていた


クリスマス休暇を終えて戻ってきた生徒たちは案の定、わたしが襲われたと思ったらしく噂が飛び交っていたらしい

セブルスがすぐに薬を飲ませてくれたせいから何度も吐いたとは思えないくらいには元気があり、わたしはけろっとしていた

「これが今週の宿題よ」

ハリーたち3人は毎日夕方お見舞いに来てくれ、宿題まで届けてくれた

ハーマイオニーは猫の毛入りポリジュースを作ったことが後ろめたいのか、いつも以上に丁寧に授業や宿題のポイントを教えてくれた

「わたしずっとここにいたいなぁ」

布団にいられるし、友達には毎日会えるし、ロックハートに会わなくて済むし、ハーマイオニーも授業のまとめをくれる

楽園じゃないか

「ばかなこと言わないでよ、遅れないようにしなくちゃ」

ハーマイオニーが言った

「なにか新しい手がかりはないの?」

声をひそめてわたしが聞くとハリーが憂鬱な顔をした

「なんにも」

「絶対マルフォイだと睨んでたのになぁ」

ロンが何百回目かのその台詞を言った

「ハーマイオニー、去年わたしがあげた手鏡、持ってる?」

「もちろんあるわよ、どうして?」

「あれ、実は魔除けの鏡でもあるんだ。だから持ち歩いててね」

「わかったわ」

ベッドサイドに置いた小瓶の炎がくるくると回っている





「T.M.リドルの日記?」

退院してすぐに知らされたのはリドルの日記のことだ

医務室を出て何故かロックハートに遭遇してしまいなんとかグリフィンドール塔へ逃げた後の話だ

「なんで息を切らしてるの?」

「ロックハート」

ロンはお気の毒、な顔をした

「あなたが入院してたの、ずっと心配してたのよ!思いやりがあってー…」

はー子がうっとりと言った

「で、日記がなんだって?」

ロックハートの白い歯を思い出し、苛々しながらわたしはハリーに聞いた

「拾ったんだ、マートルのトイレで」

ハリーが薄汚れた本をわたしに手渡した

「なんにも書いてないね」

パラパラと紙の音を楽しむ

「なぎはこれになにか隠れた魔力があると思う?」

ハーマイオニーが言い、ロンがまた肩をすくめた

「ハーマイオニーが色々やってみたんだけど、なにも起こらなかったんだ」

「だれかが、どうしてこれを捨てようとしたのか、それが知りたいんだ」

ハリーが言った

「リドルがどうしてホグワーツ特別功労賞をもらったかも知りたいしね」

なにかを忘れた気がする、さぼってる最中にふと先生が現れる気がする、とにもかくにも嫌な予感がする

そんな感じが日記から漂っている

悪意が向いている

この表現がピッタリだ

この日記はわたしに悪意を向けている

わたしの本能が警鐘を乱打した

「ハリー、この日記は気をつけたほうがいいと思う…気持ち悪いよ」

「気持ち悪い?」

ハリーに日記を返しながら言った

「わたし、理由はよく分からないけど、蛇とか蜘蛛とか、人間より足が多い生き物も、少ない生き物もダメなの。この日記も、なんだかそんな感じがする」

3人はゴクリと唾を飲んだ

「なぎが言うんだから、よっぽどだな…」

ロンが言った

「どういう意味よ」

ハリーは日記の表紙を見つめた

「とにかく気をつけて、ハリー」

それでも、ハリーはリドルのことを知りたがるのだろう

運命か魔力か、無理矢理背中を押して濁流へ誘おうとしている

そして、リドルはわたしに悪意を向けている

ヴォルデモートはわたしに興味を向けた

その分霊箱であるリドルはなぜわたしに明確な敵意を持っているのか

気をつけなければならないのは、ハリーでなく、わたし自身かもしれない

わたしはポケットに入れているセブルスの小瓶を無意識に握りしめた



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