Chamber of Secrets

□37条
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わたしはドラコの新しい箒に花を生やしてしまったことをすっかり忘れていたが、競技場に入場てきたスリザリンチームを見て思い出した

隣のロンはニンバス2001を見てちっと舌打ちした

スリザリンが勝ったらまた箒に花を咲かせてやろう

競技場は満員でグリフィンドールへの声援とスリザリンの野次が交錯している

曇天の中、試合が始まった

開始のホイッスルと同時にブラッジャーがハリーのほうに飛び出したのが見える

わたしは早速杖を向けた

使えないわけじゃなくて、ダイヤモンドは使わない

ダイヤに頼らなくても、わたしは魔法が使える!

そう自分に言い聞かせる

ハリーが間一髪ブラッジャーを避けた

思わず口笛を吹く

原作通りやはりドビーが一枚絡んでいるようだ

ブラッジャーを狂わせている本体を妨害したいところだが、ダイヤモンドなしで敵うとも思えない

反対呪文で対抗するしかない

幸運なことに反対呪文なら去年のクィディッチのクィレル先生にも使ったから完璧ではないけれど、分かる

さぁ、こい

曇天からは大きな雨粒が落ちてきた

ぶつぶつと反対呪文を唱えながらブラッジャーを睨みつける

正常に戻してもすぐにブラッジャーはハリーに矛先を向けてしまう

「なぎ?」

ブラッジャーにフレッドとジョージが苦戦しているのが見えた

「なにしてるの?あなたもしかして…」

ハーマイオニーがわたしの杖をつかんだ

「邪魔しないで!ハリーが骨抜きにされちゃう!」

言ってから少し意味が違ったことに気がついた

骨抜きて

「ハーマイオニー、謹んで訂正します。あのブラッジャーがさっきからハリーしか狙ってないからおかしいと思って調査中」

言った途端グリフィンドールはタイムアウトをとった

「どうしたんだろう」

「どうしたもこうしたも」

わたしは杖を握り直す

手先が雨でかじかみ感覚がなくなってきている

ハーマイオニーはわたしの表情を見て口をつぐみ、あたりを見回した

雨はますます強くなってきた

スリザリンがリードしているのも腹が立つ

タイムアウトが終わった瞬間、ブラッジャーが震えたかと思うとこちらに一直線に飛んできた

「え?」

「なぎ!危ない!」

ハー子の声が隣で聞こえ、観衆の悲鳴が上がった

景色がゆっくりになった

ブラッジャーがわたし目掛けて突っ込んでくる

杖を振って軌道を逸らした

頬を掠ったのかぱっと熱くなる

頬が切られたようだとぼんやりスローモーションな世界の中で考えた

わたしは首の付け根に強い衝撃を感じ目の前が真っ暗になった

どうやらわたしは失敗したらしい





「なぎ!」

ブラッジャーは向きを変えて競技場の中へ飛び出した

「しっかりして!」

悲鳴がざわざわと波紋する

「なぎ!」

「触るな!」

グリフィンドール席に合わないバリトンボイスが響き渡った

「どけ!」

「スネイプ先生!なぎが…!」

生徒を押しのけセブルスが泣きじゃくるハーマイオニーの隣にかがみ込んだ

ぴくりとも動かないなぎとセブルスの形相に周りは立ちすくんだ

白い手をなぎの口元に軽く当て、息をしているのを確認したセブルスの肩がわずかに下がる

「どけと言っているのが分からんのか!」

道を開けさせてから、セブルスがなぎをそっと抱きかかえた

なぎは意識がないらしくぐったりとセブルスの胸に抱かれている

「なぎ…!」

「医務室に連れて行く、大丈夫だ」

ハーマイオニーにセブルスが冷たく言い放ち、慎重な足取りで競技場に背を向けた

「この…バカ…」

セブルスの呟きは誰にも拾われることなく競技場の歓声と雨音に消えた

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