Chamber of Secrets

□35条
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ひょろりと長い真っ黒な蝋燭が真っ青な炎を上げ立ち並んでいる

ハロウィンの日
ハリーの約束通りニックの絶命日パーティに足を運ぶことにしたのだ

「寒いね」

四人で震えながら階段を降りる

大広間の蝋燭は金色できらびやかに輝いていたのが走馬灯のように思い出される

別にカボチャ好きじゃないけどパンプキンパイくらい食べたかったなー…なんて

不愉快な音が聞こえてきた

「あれ音楽のつもり?」

ロンがささやいた

「音楽だとして…一体どういう譜面を見たらああなるのかな」

黒板を爪で引っ掻くような音だ

角を曲がるとニックが戸口に立っているのが見えた

「親愛なる友よ」

ニックは悲しげに挨拶した

「このたびは、よくぞおいでくださいました…」

ニックは恭しく帽子を脱いで、お辞儀をした

「うわぁ…」

中に入ると見渡す限り白い半透明のゴーストでいっぱいだ

冷凍庫の中にいるように吐息が白く立ち上る

「見て回ろうか」

ハリーが言った

時々見かけたことのあるゴーストもいたのでまじまじと見ているとハーマイオニーが突然立ち止まった

「あぁっ、いやだわ」

はー子がわたしの顔を見た

「なるほど、マートルか…」

「だれだって?」

慌てて後戻りしながらハリーが聞いた

「あの子、三階の女子トイレに憑いてるの」

はー子が答えた

「あの子が癇癪を起こしてそこら中、水浸しにするんですもの、一年間トイレは壊れっぱなしだったわ」

「だから女の子は誰もそこのトイレは使わないよ」

肩をすくめ、ハーマイオニーの言葉を引き継いだ

「見て、食べ物だ」

マートルにすでに興味を無くしたのかロンが言った

真っ黒なビロードをかけた長テーブルに銀の盆がいくつか置かれている

興味津々で近づいたが吐き気がするような臭いに四人は立ち止まった

「うーむ…家の冷蔵庫で時々見かけたやつより酷い」

チーズは毛が生えたようにカビが覆い、魚は腐り蛆かわいている

「あなた冷蔵庫管理しなさそうだものね」

はー子がしみじみと言った

返す言葉もない

「行こうよ、気分悪い」

ロンの言葉に向きを変えるとテーブルのしたからカラフルななにかがすーっと現れた

「我が弟子1号よ」

「師匠!」

ポルターガイストのピーブスだ

「蝶ネクタイがお似合いですよ」

「だろう!」

ピーブスはにやにや笑いながらぷかぷかと浮かんでいる

「おまえが可哀想なマートルのことを話しているの、聞いたぞ」

ピーブスはハーマイオニーに向かって言い、続けざまに大声で叫んだ

「おおい!マートル!」

「あぁ、ピーブスやめて!わたし本気で言ったんじゃないのよ、あの子が……あら、こんにちは、マートル」

ずんぐりしたメガネをかけた女の子のゴーストがするするやってきた

嘆きのマートルだ

ピーブスがマートルをピーナツを撒いて追い出し、その後はパトリック卿と会ったりした

首が取り外し式のゴーストを見てもちっとも驚かなくなった自分にびっくりだ

ニックは首無し狩りクラブのメンバーに注意をとれられてしまい、しょんぼりと肩を落としている

「ニックの絶命日パーティなのに可哀想」

わたしが呟くとロンも呟いた

「そんなことよりもう僕、我慢できないよ」

「行こう」

ハリーがそう言い、四人で後退りして出口へと向かった

「デザートがまだ残ってるかもしれない」

ロンが祈りをこめて言った

玄関ホールに出る階段の途中で突然ハリーがびくりと立ち止まり、石の壁に耳をつけた

「ハリー?」

「またあの声なんだ…ちょっと黙ってて―…」

わたしは耳を澄ませてみたがなにも聞こえない

ロンとはー子を見るとハリーを見つめて立ちすくんでいる

ハリーは暗い天井をじっと見上げながら興奮に白い頬を染めている

「こっちだ!」

ハリーが叫び玄関ホールに出、全速力で大理石階段を駆け上がった

三人で顔を見合わせ一生懸命ハリーを追う

「だれかを殺すつもりだ!」

ハリーはわたしたちの当惑を他所に、更に上の階へ駆け上っていく

「ハリー待って、危ないよ!」

角を曲がり誰もいない廊下にでたとき、ハリーはやっと動くのをやめた

「ハリー、一体どういうこと?僕にはなにも聞こえなかった…」

ロンが汗を拭きながら言った

「見て!」

はー子が息を呑み廊下の隅を指差した


"秘密の部屋は開かれたり
継承者の敵よ、気をつけろ"

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