Chamber of Secrets

□34条
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「出てこないよりは出たほうがええ」

ハグリットが洗面器を置き、明るく言った

「ロン、みんな吐いちまえ」

「止まるのを待つしかないと思うわ」

はー子が言った

「あの呪いってただでさえ難しいのよ、まして杖が折れてたら…」

わたしは暖炉の前でファングと相撲をとった

「うわ、よだれはずるいぞファング」

「そういえばなぎ、魔法使えてたね」

ハリーが思い出したように言った

「なんだなぎ、魔法が使えんくなっとったんか」

ハグリットはお茶の準備をしながら言った

「使えないわけじゃないけど…なんていうのかしら、夏休みぼけしちゃってたのよ」

わたしの代わりにハーマイオニーが答えた

なるほど!
あれ夏休みぼけだったのね

「ニンバスから花が咲き乱れたときのマルフォイの顔ったら!」

ロンが吹き出しナメクジを撒き散らした

「ねえ、ハグリット、ロックハートはなんの用だったの?」

「井戸の中から睡魔を追い払う方法を俺に教えようとしたんだ」

ハグリットは不機嫌そうにティーポットをだんとテーブルに置いた

「なるほど、さぞかし長い話だったでしょう」

わたしはファングの耳を掻きながら、心からお悔やみ申しあげた

「やっこさん、だれに呪いをかけるつもりだったんかい?」

ロックハートの話が一段落したとき、糖蜜ヌガーをすすめながらハグリットが言った

「マルフォイがハーマイオニーのことなんとかかんとかって呼んだんだ」

ハリーが答えるとロンがテーブルの下から顔を出した

「マルフォイのやつ、ハーマイオニーとなぎのこと穢れた血って言ったんだよ、ハグリット―」

途中でロンはまた洗面器と向き合った

ナメクジには波があるようだ

「そんなこと本当に言うたのか!」

ハグリットがうなり声を上げた

「言ったわよ、でもどういう意味だかわたしは知らない…」

「マグルから生まれたってことだよ」

げーげーナメクジと戦っているロンの代わりにわたしが答えた

「そうそう、両親とも魔法使いじゃない者を指す最低の呼び方なんだ」

ロンがナメクジを洗面器に投げ込みながら言った

「マルフォイ一族みたいにみんなが純血って呼ぶもんだから、自分たちが誰よりも偉いって思ってる連中がいるんだ」

「そんなの関係ないのにね」

「おれたちのハーマイオニーが使えない呪文は今までにひとっつもなかったぞ」

ハグリットが誇らしげにいい、はー子は頬を赤くした

「ここに魔法の使えないマグル生まれの女の子がいますぜ」

わたしはファングを抱き締めながら言った

「あなたのさっきの魔法すごかったわよ!」

ハーマイオニーが優しく言った

「うーん…まぁそれで良しってするか」

ハグリットが笑った

「なぎはいつもこんな感じにテキトーなんだよ」

ロンが洗面器から顔を上げながら言った

「まぁ、しかしロン、やつに呪いをかけたくなるのもむりはねえ」

ハグリットがナメクジの落ちる音を掻き消すように言った

「だけんど、おまえさんの杖が逆噴射したのはかえってよかったかもしれん」

糖蜜ヌガーで口が開かないなう

「ルシウス・マルフォイが学校に乗り込んできおったかもしれんぞ、少なくともおまえさんは面倒に巻き込まれずにすんだっちゅうもんだ」

なんでこっちの菓子はこんなに甘いんだ

「ハリー、お前さんサイン入りの写真を配っとるそうじゃないか、なんでおれに一枚もくれん?」

「そんなの僕配ってない!もしロックハートがまだそんなこと言いふらして―」

ハリーが憤慨して言った

「からかっただけだ」

ハグリットが笑いながらハリーの背中をぽんぽん叩いた

その後はハグリットの育てている巨大カボチャを鑑賞し、城に戻った

「ポッター、ウィーズリー、そこにいましたか」

玄関に足を踏み入れた途端、厳しい声がホールに響いた

「二人とも、処罰は今夜になります」

ロンはフィルチとトロフィー磨き、ハリーはロックハートのファンレターの返事書きだ

なんだかひとが罰則を受けてるのを見るのはそんなに悪い気分じゃないなぁとにやにやしていると、マクゴナガル先生が最後にわたしのほうを向いた

「嶋本、あなたはスネイプ先生がお呼びです」

「へ?」

「夕食後すぐに行きなさい」

「心当たりがないのですが…」

わたしがぼんやりとマクゴナガル先生を眺めると、ハリーたち三人ははっと顔を見合わせた

「え?なにさ」

「マルフォイの箒に花を咲かせたことを忘れたとは言わせませんよ」

マクゴナガル先生が感情を押し殺した声で言った

どうやら教師として叱るべきだが、ニンバス2001を花咲か状態にしたのはすがすがしく思っているようだ

「照れます」

「…スネイプ先生はたいへんご立腹でしたよ」

ハリーもロンも心底気の毒にという顔をしている

マクゴナガル先生が去ってから大広間で叫んだ

「誰だあんな酷い魔法かけたやつ!」

「なぎだよ」

ハリーたちの声がきれいにハモった

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