Chamber of Secrets

□32条
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「あー…久しぶりのホグワーツ」

長い鉄道旅の解放感、
目の前に聳え立つホグワーツ城は夕焼けに溶けている

しかしすぐに闇に包まれるのだろう

樫の重い扉は開いており歓迎会の準備がされている

前を歩くはー子の足取りは軽く、階段をあがっていく

「嶋本、お前が特急で来てなによりだ」

ぼんやりはー子の背中を見ていると低い猫なで声が隣からした

ダイアゴン横丁のときといい、なんでいつも沸いて出るんだっ

まだ心の整理はついてない

荘厳な心持ちが一変して、心臓が鐘を乱打している

「お前のことだ…てっきりあやつらと―…」

セブルスはわたしの様子に言いかけた言葉を飲み込んだ

片手には日刊予言者新聞の夕刊を握っているのが見える

「顔色が悪い…どうした」

「な、なんでもないです」

わたしはたじたじと後ずさった

「…待て」

つい逃げるようにはー子の後を追った

「嶋本」

無視して大広間の生徒の渦に飛び込んだ

「嶋本!」

追いかけてくるセブルスの声に心臓が跳ねる


「なぎ?どうしたの?」

はー子の隣に滑り込む

「スネイプ教授に捕まっちゃって…」

「あら、あなたスネイプが好きなんじゃないの?」

「な、な…な?」

さらりとハーマイオニーが言った言葉に口をぱくぱくさせてしまった

一発芸!酸欠の金魚

心のなかでギャグをやる余裕はあるからまだ大丈夫だ

「金魚!」

「…なにそれ?」

はー子はかわいい顔をしかめた

あれ、金魚って日本のお魚?

「組分けが始まるわよ」

口をぱくぱくさせているままのわたしをはー子が小突いたとき、
おずおずと一年生が長い列を連ねて大広間に入ってきた

「お腹空いた…」

「もう…あ、ほらジニーよ!」

ハーマイオニーが赤毛の女の子を示した

女の子は恥ずかしいのかうつ向いている

「そういえば去年駅でちらりと見たなぁ…」

「なぎは会ったことなかったのね」

初々しい

中年のような感想しか出てこない

つい一年前わたしもあの列の中にいたんだ

帽子は二回かぶっているが、どちらの記憶も鮮やかに甦る

組分けの様子を公開するということはすごくいいことなのかもしれない

教職員テーブルの席がひとつ空いているのが嫌でも気になる

今ごろ…

ついでにその隣のパステルな水色の
ローブの男性も、だ

「ロックハート先生よ…」

新入生が呼び上げられるなか、ハーマイオニーがうっとりして言った

げんなりしてはー子から目を反らすとダンブルドアと目が合ってしまった

蝋燭のあかりで妙にきらきらしていて気持ち悪い

口パクで芋々言ってるようだ

「ハーマイオニー」

組分けされたジニーが隣にやってきた

「なぎと言います、よろしくねジニー」

お姉さんぶってみる

「お兄ちゃんたちから聞いてるわ」

ジニーが明るく微笑んだ

「ちょっと待って、たぶんそれ嘘」

わたしの印象が悪くなること吹き込んでると思うんだ、それ!

「トイレブラシの君ってジョージが」

「うん、根も葉もないから!ジニー!忘れて!」

「ロンは減点プリンセスって」

「ロンあとでしばく!」

「そうよ、ロンとハリーはどこ行ったわけ?」

「あ、忘れてた」

気付けば組分けも終わり、宴もたけなわである

「先ほどから拝聴しておりましたが」

「我々を嘘つき呼ばわりとは」

「「心外ですな!」」

斜め前に座る双子が口を揃えた

「しかし減点プリンセスなんていう名前もあったなんて!」

「初耳だよ!わたしも!」

フレッドが大袈裟にジョージを仰ぎ見る

「そう呼ぶしかないね!」

隣のジニーがくすくす笑った

素敵なお姉さんぶろう作戦は双子とロンのせいでまったくの失敗である

「我が弟がいないのはどういうことだ?」

どう考えてもこの双子のほうが減点コンビとか呼ばれるべき

「特急にも乗ってなかったわ」

みんなが顔を見合わせるなか、わたしはソーセージをロンに見立ててフォークを突き立てた



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