Philosopher's Stone
□1条
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机をひっくり返し、数Vの教科書をかじり、窓から飛び降りたい衝動に駆られる
高3受験期 秋深し
なぎは薄暗くなった帰路をダラダラと歩き、家について制服も脱がずにベッドに入り込みふて寝する
いつもの日課である
「あー布団と結婚して冬休みと子供つくってGWと浮気してハワイでバカンスしたい」
といいながら布団でヌクヌクする幸せ
ただしいくらヌクヌクしても偏差値は上がらないということは百も承知であるため、所詮ふて寝という形になっている
「ふぁ…」
ヌクヌク
気がつくと真っ白な世界に立っていた
「なんだここ…夢?夢だと自覚する夢は初めてだー…ついに私も受験を前にして悟ったか!ハッハッハ」
「夢じゃありませんよ」
高笑いをしていると、突然後ろから声を掛けられた
「何者だ!私の後ろに立つな!」
叫びながら勢いよく後ろを振り返ると、バーコード頭の現代の流行メタボリック体型の中年
まさに The おっさん が白いハンカチで汗を拭きながら立っていた
「天部の人事課課長Aです」
「やっべ変な夢、悟るどころか勉強のし過ぎでどっかおかしくなっちゃったかな、つかツッコミどころありすぎてもうどこからツッコんでいいかわかんないよね」
「だから夢ではないんですよぉ〜」
The おっさんが汗を拭きながらまた言っている
「じゃあなんなんです?っていうか暑くないですよねなんで汗かいてるの、更年期ですねわかります」
「天です」
「点、XY平面における点ですね、わかります」
「えっと書類によると貴方は」
華麗に2度もスルーされ地味にHPを削られる
「…ぁあ!ほら、あそこ行って好きにしてください」
「わかりにくっ」
「良いツッコミです、貴方ならあそこ行ってもやっていけますよ」
課長Aが微笑む
「誉めたつもりだろうけど代名詞多すぎて結局なにがなんだか分からないからっ」
「では手続きにはいります」
「無視か!意味わからんっ、責任者でてこい責任者!」
「私です、課長Aです」
「Aってなんだよ、村人Aかよ」
「課長です」
「わかってるよ!」
「流石です、はいはい」
「その相づち嫌だ!」
「ではこの中から一つ選んでください」
と言って課長Aは雨にうたれた感漂うヨレヨレしたお菓子箱を取り出した
若干馬鹿にされた感じに苛々しつつも箱を開けると、紅いビロードの上に、横3×縦4列に様々な色の宝石が並べられていた
「じゃあコレにします」
私はダイヤモンドっぽい宝石を選び手渡した
「何故これを選んだのですか?」
「私、腹黒いから宝石くらいは白いの選ぼうと思って」
同じサイズならばダイヤモンドが一番高価だと思ったからである
課長Aはぱちんと手をうち、明るい声をだした
「ナルホド!納得です」
「初めて会った人に言われたくないわ、埋めるぞ」
「では埋め込みます」
「は???」
課長Aはダイヤを私の心臓付近に強く押し付けた
「…セクハラですか?」
「はっ…子供に興味はねぇよ」
課長Aが黒い瞬間を見たと同時にダイヤが明るく光り真っ白につつまれた
光は徐々に体に溶け込んでいった
「はい、手続きは以上です」
「は??課長は私になんど『は?』と言わせたら気がすむんです?」
「『ほ』と言えばいいでしょう?ボキャブラリーの少ない人だ」
「そういうことを言ってるんじゃないよ!」
「これで貴方はこれから行く世界の神です」
「新世界の髮になる!」
「私の頭見て言ってんのかゴラァ!!」
バーコード気にしてたんだ
「髮…神ってどういうことです?ってかなんで私が神なんかやらなきゃいけないんです?私はヌクヌクしてたいんです」
「まさにそこです」
「どこです?」
私はキョロキョロする
「真面目に聞いてください」
「これ以上ないくらい真面目じゃっ」
「貴方がもっとも暇そうだったからです」
「は!?そんな理由で神って選ばれるの!?唯一神とか信じてる人たちに謝れ!」
「貴方と宗教的神とではツインテールとスキンヘッドくらい格が違います」
「ずいぶん違うのはわかったけどやっぱりわからない!」
「あなたは神のぱしりレベルと思ってくれて結構です」
「結構じゃねぇえ」
「もう貴方の相手も飽きました」
「私もバーコードなんざ見飽きたわ」
「バーコードを笑う奴はバーコードに泣くという言葉を知らんのか!?小娘が!」
「知らんわぁ!知っててたまるか!バーコードに泣くってなんだよスーパーでピッて異常に読み取りにくいとか!?」
「ま、それくらい元気なら大丈夫ですね、いってらっしゃい」
課長Aは私を後ろに押した
「え?」
体がふわりと宙に浮くのを感じる
「うぁあああああ!」
私は絶叫とともに自由落下していった
*