Chamber of Secrets

□35条
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しぶとく残っていた暑さは、生徒が落ち着きを取り戻すとともに冷たく湿った空気に変化した

ホグワーツの10月である

わたしとロンが魔法薬の宿題をやっているとハリーがクィディッチの練習から帰ってきた

「ほとんど首無しニックに絶命日パーティに誘われたんだけど…行かない?」

「絶命日パーティですって?生きているうちに招かれた人ってそんなに多くないはずだわ―おもしろそう!」

ハーマイオニーは夢中になってそう言った

ロンは宿題が半分も終わってなかったので不機嫌だ

「自分の死んだ日を祝うなんてどういうわけ?」

窓の外は墨汁で塗りつぶしたように暗くなっていた

「死ぬほど落ち込みそうじゃないか…」

「大丈夫、もう死んでるんだから!」

わたしは羊皮紙をくるくる巻きながら言った

「君、もう終わったの?一緒に始めたのに…」

ロンがすっとんきょうな声を出した

夏休み中に5年生に飛ばされてOWL試験まで受けたのだから2年生の内容がロンよりもすらすらできるのは当然だ

「ちょっと見せてよ」

「やーだね、減点プリンセスとか呼ぶ奴には貸さねぇ!」

談話室は賑やかだ

フレッドとジョージが隣の暖炉の前で火トカゲに花火を食べさせたらどうなるか実験をしている

「そのトカゲどうしたの?」

ハリーが聞くとジョージが得意気に答えた

「魔法生物飼育学のクラスから助け出してきたんだ」

「まったくもう…」

はー子が呆れたように言った

「主観の相違だね」

静かにくすぶっていた火トカゲは突然空中に飛び上がり火花を散らした

バンバンと大きな爆発音をたてながらぐるぐる回っている

「フレッド!ジョージ!」

パーシーを除いたみんなが大喜びだ

火トカゲの口からは滝のようにオレンジ色の星が流れ出してきた

「きれい!」

「すっげー!」

ロンも宿題どころではなく火トカゲにくぎ付けだ

そのとき火トカゲが暖炉の脇に座って眺めていたわたしに飛びついてきた

「わぁあ!」

火トカゲはわたしの肩から腕をチョロチョロと走りまわっている

「かわいい!」

ジニーが歓声をあげた

かわいいことは認める

しげしげと眺めているとはー子の金切り声がした

「なぎ!あなたの羊皮紙が燃えてるわ!」

「あばばばばばば」

わたしは慌てて杖を振り鎮火させようとした

なぜか火は勢いを増し、ハーマイオニーが消し止めたころには10p程度の紙切れになっていた

「…なぎ、落ち着いてこれは事故だ」

膝をついて紙切れを見つめているわたしに恐る恐るジョージが声をかけた

ロンが肩すくめながら呑気に言った

「提出までにもう11時間切ったよ」

「復元できないかしら…」

ハーマイオニーがいくつか呪文を試したがここまで焼失してしまうと無駄だった

「おい」

「「は、はい!」」

「覚えてろよツインズ」

談話室がシーンとした


セブルスは怒りを抑えながら言った

「Ms.嶋本…これはどういうことかね」

セブルスがわたしの宿題をつまみあげた

辛うじて名前の部分は残ったのだった

「昨日寮でボヤ騒ぎがありまして」

しれっと答えるとセブルスは思いっきり眉間にシワを寄せた

「火災保険がおりるまでもう少々お待ちくだひゃ―」

喋っている途中に片手で頬を思いっきり引っ張られた

「夕食後研究室にきたまえ、終わるまでやってもらう」

「ひゃい…」

わたしは大人しく早めに夕食を切り上げ、宿題をやりにセブルスの元へ向かったのだった


「あの時は殺されるかと思ったね」

「あまりの殺気に談話室静まり返ったもんな」

なぎが大広間を去ってからグリフィンドール生は口々に喋り出した



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