Chamber of Secrets

□32条
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「なぎ」

呼ばれて特急の窓から顔を出す

青空には白い雲が流れている

「校則は守るんだよ」

「うん」

特急の深紅と真っ青な空と
目が痛くなるような雲の白

「風邪ひかないように」

「気を付ける」

「手紙書いてね」

「もちろん、ニゴーに届けてもらうよ」

リーマスは他になにか言い忘れていないか考えているのか、足元に目をやった

「…懐かしいね」

リーマスが顔をあげて言った

「え?」

「一年前もこうして君に…」

リーマスは口をつぐみ、弱々しく微笑んだ

「約束…覚えているね?」

眉間にはシワが寄っている

「絶対使わない…でしょ」

今年は絶対にダイヤの力を使わない

リーマスと逆トリップしたときにしてしまった約束だ

「お願いだなぎ、これだけは守ってほしい」

「リーマス…」

「すまない、でも心配なんだ」

リーマスの唇は固く噛みしめられている

「落ちこぼれてもなんだってもいい…また無事に帰ってきてくれれば…」

特急の汽笛が鳴った

「約束する」

わたしはリーマスを真っ直ぐ見つめて言った

「元気に帰ってくるよ」

「待ってる」

わたしの頭を撫でたリーマスの頬に、おでこをすりつけた

ディオのとき、子供リーマスによくこうした

その癖が自然と出てしまった

リーマスの眉間の谷は心なしか薄くなっている

安心してもらえたのだろうか


紅の車体は滑らかに動きだし、駅はどんどん小さくなっていく

我ながらたいへんな約束をしたものだ

リーマスはあれこれ聞かない

しかし相当…本当に相当心配させている

だから無茶と分かっている約束もNoと言えなかった

今年は融合が進むまで大人しくするしかない…の…だろうか

「なぎ、やっぱりハリーとロンがいないわ!」

はー子がコンパートメントに戻ってきたことで現実に引き戻された

「座席の下とか見た?」

「全部見たわよ!便器の裏まで見たわ」

すげぇ、はー子

「じゃあ…いないんじゃん?」

「どうしてそんなに落ち着いていられるのよ」

「慌ててハリーが出てくるなら慌ててるよー」

わたしはのんびり言った

「そうだけど…」

はー子は漸く向かいに腰を下ろした

「汽車の旅を楽しもうよ!ハリーとロンは大丈夫だよ」

今ごろフォード・アングリアの旅かな

あとでなんとかしなければ…

「そうだといいけど」

はー子はまだ不満そうだ

「あなたは夏休みなにしてたの?もっとお手紙欲しかったわ」

「んーと…実家の日本に少々…かなぁ」

「その話聞きたい!あなたったら全然話してくれないんだから」

女の子同士の会話に花が咲いた



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