出来損 番外

□28.75条
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「とりっく おあ とりーとめんとっ!!」


10月31日

ホグワーツはカボチャで溢れている

「トリック オア トリートだろう馬鹿」

セブルスが思いっきり不機嫌な顔で言った

「朝から機嫌が悪いなぁ…」

「誰のせいだ、誰の」

「妙に苛々して…排卵日か」

「ど阿呆っ」

「でお菓子」

「お前にやるお菓子はない」

「おかしいな、お菓子だけに」

「やかましい!!」

「にゃー…」

「しょんぼり歩くな!!」

「セブルス、朝から怒鳴ってどうしたの?」

「り、リリー…この馬鹿が悪いんだ」

「あら、そんなこと言っちゃいけないわよ」

セブルスとリリーは楽しそうに会話し始めた

やだ、かやのそとってやつだ

「あ、セブルス」

「なんだ?」

「トリック オア トリート!」

リリーが可愛く笑った

「………」

セブルスが鞄から少し皺になった包みを取り出した

「ありがとう、セブ!!」

なんだよあれ

私にはくれなかったじゃん

「セブルス」

「なんだ、なぎ。まだいたのか」

「…っ!!せぶるすのばぁああかぁああ!!」

「なっ…ま、待て!!」

「ばぁああかぁああああ」

息が切れるまで廊下を疾走した

むしゃくしゃする

すごいむしゃくしゃする

「あ、なぎ」

「よう、チキン。そんなに息を切らしてどうした」

「とりっく おあ とりーとめんと…」

「トリートメントで」

ジェームスが流し目をしながら頭を出してきた

「そうくるとは思わなかった」

「甘いな、タマは」

「そういうなぎはちゃんとお菓子持ってるのかい?」

リーマスがにこやかに言った

「そうだぜ、チキン。俺たちは悪戯仕掛人だぜ?」

「はい」

「なんだ、普通にもってんのか…つまんねーの」

「ありがとう、なぎ。僕もあげるよ」

「ねぇタマ、なんで僕にはくれないんだい?」

「リーマスありがとう!!」

「俺はやんねーぞ」

「尻臼のお菓子なんかいらんわ」

「ねぇ、タマ、僕の分のお菓子は?」

「発音変だろ!!シリウスだ!!」

「シベリウス」

「ねぇタマ」

「それはフィンランドの作曲家だ!!」

「シリアル」

「それは朝飯!!」

「たぁああまぁああああ」

「だあっ!!耳元で叫ぶな!!」

「お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!!」

「お前はトリートメント所望だったろうが!!くらえっ」

杖をあほメガネの頭に向けて振った

「ぼ、僕の髪がつやつやに!!」

「良かったじゃねぇかよ癖っ毛」

「アイデンティティー!!」

「さらばじゃっ」

私は中庭の定位置(湖前の木陰)を目指した

が、

途中で想定内なのか外なのか分からないが

「芋子やっ!!」

例のごとく白目を剥いたダンブルドアが湧いて出た

「トリック オア タロ芋っ」

「タロ芋で」

「くそ!!そうくると思わなかった!!流石の儂もタロ芋は持ち歩いとらん…」

ダンブルドアは両膝をついた

「山芋で勘弁してくれんか?」

腹巻きからにょろりと山芋を引っ張り出した

「山芋持ち歩いてんのもどうかと思うけどな」

「好物での、山田」

「山田は喰うなよ」

「いやー芋っ子には一本取られたのぅ…」

ダンブルドアは現れた時同様ひらりと消えた

あほたちと遊んで少しすっきりしたが、リリーとセブルスのことを考えるとまた胸がもやもやする

こんなときはあの木陰で寝転ぼう

意外なことに木陰には先客がいた

今一番顔を見たくない奴

「なぎ…」

「なに?」

つい冷たい声がでた

「さっきはその……」

「ぁあ…ごめんね、折角リリーと話してたのに邪魔して。じゃあ、私行くね」

「待て!!」

「ごめんって言ってるじゃん、じゃあね」

顔を見ずに言い捨てて木陰を後にしようとした

「待てってば!!」

セブルスにがっちり腕を捕まれた

「謝るのは僕だ、すまなかった。ちゃんとお前のお菓子も用意してあったんだ」

セブルスは一息に言った

「……リリーにそう言えって言われたの?」

「違う!!僕を見ろ!!」

セブルスは無理矢理掴んだ腕を引っ張って向かい合わせた

案の定、眉間には皺が寄っていた

「ごめん、なぎ」

セブルスはなんだか泣きそうな顔をしていた

つい可愛くなって笑ってしまった

「トリック オア トリート」

「これ、やる。お前の悪戯なんか怖くないけどな…」

「ほう?男に二言はないな?」

「当たり前だ」

セブルスは唇を少し歪めて言った


ふいにその唇に軽く唇を落とした

「ななななにするんだ!!」

「ん?悪戯」

「ば、馬鹿…馬鹿……」

セブルスは暫く真っ赤だった

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