出来損 番外

□18.5条
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夏休み初日

青い空に白い雲

窓からは夏の日差しが部屋に振り込んでいる


「いい天気だ」

リーマスが爽やかに言った

「なんかいいことがありそうな天気だね」

私が言い終わる前に爆音がして家のドアが吹き飛んだ

木片がリビングまで飛び散った

「…前言撤回」

朝から自宅の玄関が爆破されるというのが“いいこと”な訳ない

リーマスが頭を抱えた

「出迎えは無しか貴様ら?!儂はVIPじゃぞ?!」

次の瞬間、ダンブルドアがそう叫びながら飛び込んで来た

この時点で今日1日の方向は決定付けられた

“惨劇”

私とリーマスはげんなりと顔を見合わせた

「…お邪魔させていただく」

夏なのに黒服のセブルスがなんだかものすごいやつれた顔で家に入ってきた

大方ダンブルドアに振り回されたのだろう

「まぁじゃんじゃんくつろぐのじゃ、セブルス」

ダンブルドアが素早く私を椅子から蹴り落とし、その椅子をセブルスに勧めながら言った

「…大丈夫か?」

セブルスは椅子に座らず私に手を差し出してきた

「仲がいいのぅ!ヒューヒュー!」

ダンブルドアが囃し立ててきた

セブルスはダンブルドアの喉笛に風穴を開け、本当に“ヒューヒュー”言わせてやろうかという顔をした


「…でなんのご用です?」

リーマスがため息とともに尋ねた

「よく聞いてくれた!流石リーマスじゃ!!」

ダンブルドアは背負っている大きなリュックを左右に振りながら、自分の喉に杖を当てた

そのまま自害してくれればいいのになどと一瞬思ったが、
どうやら声を拡大する魔法だったらしい

ダンブルドアの耳障りな声が部屋いっぱいに広がった


「キャンプじゃホイ!キャンプじゃホイ!キャンプじゃホイホイホーイ!!!」


私たち3人は暗い顔で見つめ合った

「どういうことだい?セブルス」

「今日は朝4時からあの調子なのだ…私の部屋に死の呪いを乱射しながら『キャンプに行く』と飛び込んで来て…」

セブルスは青い顔で言った


「キャンプじゃホイ!キャンプじゃホイ!キャンプじゃホイホイホーイ!!!」

ダンブルドアがまたひとり陽気に歌った

「だからってなんで私たちの家に…」

「リーマスの家=山奥=キャンプじゃろうが!」

リーマスは無表情だが恐らく引越しを検討していることだろう

「さぁキャンプじゃ!やれキャンプじゃ!!一緒に行ってくれるまで『キャンプの歌』を歌い続けるぞ!?」

ダンブルドアはウキウキと言った


「分かりました…いいね?なぎ」

リーマスがひきつった笑顔で答え、私に同意を求めた

「うん…」

「今日はえらく元気がないのう芋ッ子よ!夏バテか?!我が侭ばかりでちゃんと野菜を食べんからじゃ!!愚かな芋め!!略して愚芋(おいも)!!ブウェッフェッフェッ!!」

ダンブルドアは一息で言った

「リーマス…」

殺っていい?

「なぎ、ここは我慢だ」

リーマスは手を私の頭にのせて言った

「少し行ったところに湖があるからそこでどうでしょう」

「もうそれでいいわい!さぁ行くぞ!儂についてこーい!!」

ダンブルドアが意気揚々と言った


「…隙をついて湖に落とそうよ」

「賛成だ―…しかし湖が酸性化して生物が死滅するぞ」

セブルスがぼそりと呟いた





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