稲妻)短編夢

□ダメだとしても
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「久遠監督、こんばんはっ」


「もぅ遅い。早く寝ろ上原」


今は、午後11時
普通なら消灯時間を過ぎているはずの時間帯に彼女―…上原琴音は、
ある男―…久遠道也の部屋に訪れていた


彼女がなぜこんな時間に久遠道也の部屋に訪れていたののか…
それは琴音が少なからず道也に"恋心"を抱いていたからだった



「監督、今日もまだ寝ないんですか?」

「あぁ、」


でも彼女は、こんな恋は報われない…そう思っている。

いや、実際にそうだろう。
普通に考えれば、年の離れた彼女等が結ばれる訳がない


でも彼女は諦められなかった

だから今日もまた、この部屋に来ているのだ



「…久遠、監督
寒くないですか?私が暖めてあげましょうか?」

「いや、大丈夫だ」


彼女は、"私の想いは伝わらない
なら、もう伝えて諦めよう…お終いにしよう"
そう思ったのだった

だから、今日はこんなにも積極的なのかもしれない



「あの、道也監督…」

「…何だ、」

「……あの、その…」


「用が無いなら、早く寝ろ」

冷たく言い放つ
その言葉に少し傷付く彼女だが、
今日は絶対に言う!ともう一度決意を固める


「監督…、道也監督!
…その…、監督が好きですっ!側に…居させてください」


好きと伝えるだけだったはずなのに、
彼女は最後に少しの我が儘を付け足した

彼、久遠道也はと言うと…


作業していた手を止め、少しだけ彼女の方を見る


少し優しく微笑んだのは、気のせいではない


「側にいるかどうかは上原の好きにしたら良い。

だが、皆の前では道也監督と言うなよ?」


「な、何でですか?」


「皆の前では、久遠監督…、
二人きりなら"道也"でいい。
解ったな、琴音?」



彼はそれだけ言うと作業にまた戻った

そんな彼を見て彼女は…

「…道也…、ありがとう」
そう言い優しく微笑んだ






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